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黒白ノ風
146 指輪
吹いたお茶をごしごしとおしぼりで拭きつつマントを着た2人を盗み見る。

隣でいたいけな少女がお茶を吹いたというのにその2人は微動だにせず団子をもっさもさと食し、お茶をすすっていた。
ふとお茶を持つ手に目が行く。
正確には手でなく、指にすっぽりと入っている指輪にだ。
…暁で共通の指輪。
共通なのだが、指輪に記してある文字が1人1人違う。
1人は…指輪に“朱”と記されている。
もう1人は…“南”と記されているのだが、青とも水色ともいえる肌の色で誰かは一目瞭然だ。

…イタッチーと鮫だ。
外見も一致する。
…トントン
分かるやいなや、私はイタチと鮫がいる机を軽く叩いた。
すると2人はぱっとこちらを向いた。
一瞬鋭い視線が私にささる。
しかし、少しするとその視線は柔らかいものになった。
私ということを認識したのであろう。
イタチは深々と被っていた笠をほうり投げ、満面の笑みで私に向かって来た。
 「おぉ!!妹よ…」
しかし、
ドコッ
鮫によってそれは阻止された。
放り投げられた笠を見事キャッチしていた鮫はそれを再びイタチの頭に無理やりはめ、腹に一発。
 「お゛っ」
などと断末魔を発してイタチは動かなくなった。

 「…やれやれ、久しぶりですね、サチさん」
腹を抑えるイタチを担ぎながら鮫が一言。
 「久しぶり、鮫!相変わらず青いね!」
私もそれに返すように一言。
 「・・・相変わらず口が悪いですね」
 「鮫はエラ呼吸できるようになった?」
 「・・・残念ですが私は“人間”です。エラ呼吸などできません」
人間というところだけ強調された。
やっぱまだ気にしてるんだね。
 「へぇー、つまんないの」
 「・・・とりあえず場所を変えましょう。ここは目立ちますから」
鮫は私の言葉の節々に対して額に青筋を浮かべながら店を後にした。
私も店の人にお金を払い、鮫の後を追った。

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