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黒白ノ風
142 勝手
 「・・・」
ただ私の目の前にあるものは黒い穴と、
心にあるのは真白の言葉。
真白にとって私はそんなものでしかない。
当たり前か。
長生きすればそうもなってくる。
永く世界に留まれば留まるほど出会いも多い。
元々こちらの世界から木の葉に呼び出されるはずだった人は私ではない。
他にいる。
私は偶然呼び出され、なんやかんやがあってここに帰された。
まぁ、悪く言えば真白たんは勝手だ。

・・・だから、私は、
勝手にさせてもらう。
前、真白は私のことを大好きだと言った。
言ってくれた。
嬉しかったのは間違いない。
私も真白が、真白たんのふっさふさな体毛が大好きだから。

真白とサスケを飲み込み、だんだんに縮小する黒い穴を見据えた。
様々なことを思い出しつつ、じり…とフローリングの床を踏みしめ、穴へと飛び込んだ。
途端に黒く染まる視界。
上に目をやると私の部屋から繋がっていた穴が塞がるのが見えた。
下からは風。
この黒しかない世界では下から吹く風のみが触覚の感覚であった。

 「・・・何故入ったのだ?」
どこからか真白たんの声が聞こえて来た。
 「私が行きたかったから」
 「理由になっていない」
 「真白は勝手だよ。勝手に呼び出したと思ったら、また元の場所に帰して………まぁ、木の葉に呼び出したことについては私的に最高だったけど」
 「しかし…」
 「私は木の葉にいた方が楽しかった…それに、自分の身くらい自分で守れるよ」
 「・・・」
 「・・・」
少しの沈黙。
 「・・・仕方あるまい…言うことを聞くのは一度きりだ」
 「よっしゃ!」
とうとう真白が折れた。
嬉しさのあまり私は大まかなガッツポーズをとってみた。
 「我がおぬしを元の世界に帰した理由は2つある・・・1つ目は我がおぬしを好いているから。2つ目は時間の軸がおかしくなっているからだ」
 「時間の軸?」
 「時間の経ち方だ・・・1つ目の理由と2つ目の理由はリンクしていると言っていい」
 「・・・?」
理由?
私のことを真白が好きなことと時間の軸の変調がリンク?
 「おぬしは今まで1年と少しばかり木の葉の里に留まっておったな」
 「うん」
 「久方ぶりに元の世界に戻り、何年、何日・・・いや、何時間経っていた?」
 「・・・1時間と…ちょっとだけ」
 「この違いが“時間の軸がおかしくなっている”というのだ。この時間のずれは日数を追うごとにさらに変化する・・・サチよ…おぬし、帰る場所を失うぞ」
 「へー、別に帰らないからいい」
“サチを早めに元いた世界に帰さないと帰る場所を失ってしまう”
真白の言い分はこうだろう。
しかし、私の帰る場所は決まっている。
木の葉隠れの里だ。

しばらくすると広大に広がる青空が目の前いっぱいに広がった。
 「着いたね」
 「…あぁ」
 「やっと到着か」
ふとサスケを見ると姿は変化し、12、3歳位に戻っていた。
服がぶかぶかで何とも心地悪そうである。
・・・あれ?サスケ?
 「そうだ、サスケもいたんだった!」
 「オイ!」
この激しいつっこみの後、無事地面に着地し、長く短いような旅は終わりを告げたのだった。

 「んじゃ、ばい!」
私は到着するなり真白とサスケに手を振り、家路についた。
その場に残されたのは真白とサスケのみ。
 「おぬし、勇気があるな。正体不明の術に飛び込んでくるとは・・・その元よりある力…さらに強くしてやろうか?」
 「いいのか?白兎」
 「あぁ、サチを助けてくれた礼だ…またあやつを助けてやってくれ」
 「あぁ、今度こそ…」

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