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黒白ノ風
136 鬱陶
1年ぶりの懐かしき家の廊下を歩き、向かった部屋。
部屋の中は変わらず1年前と同じ、そのままだった。
壁のシミ、服、装飾品。
全てのものが懐かしく感じたのは確かである。

サスケに座布団を出し、座るように促す。
そして私も座る。
 「さて、と…どうする?」
私はいきなりこれからのいきさつについて切り出してみた。
 「…どうするもこうするも…あの変な狂った白い兎がいなきゃどうにもなんねぇだろ」
サスケはこんな返答。
まぁ真白たんのことを変でクレイジーな白い兎と言ったのは流石に聞きずてならなかったのだが。

サスケのクレイジー発言の後、色々2人で考えてみるものの、時間だけが過ぎた。
 「どうすれば…」
こんなことを呟き続けて何分になるであろうか。
コンコン
不意にドアがノックされた。
私が返事をする間もなく入室してきたのはおばばだった。
手にはお菓子のような物体を持っている。
お菓子をもってきてくれたのか。
おばばも意外に気、きくな…
 「こんなものしかなくてごめんなさいねー」
おばばはそう言い、お菓子のみを置いて去った。

おばばが去った後、お菓子に手を伸ばして封を切り、中身をもっさもさと食べる。
しかし、いい考えは浮かぶはずもなく、ただもっさもさ…というお菓子を喰む音のみが部屋に響いた。

コンコン
またもや部屋がノックされた。
先程と同じように返事をする間もなく開け放たれた部屋のドア。
そのドアの向こうにはアイスココアを持ったおばばがいた。
おばばは何の断りもなくズカズカと部屋に足を踏み入れ、アイスココアのみを床へと静かに置き、去った。

おばばが去った後、私はアイスココアに手をのばしてちゅーっと音を立てながら飲む。
しかし、それでもいい考えは思いつくはずもなくただ、ちゅー…というアイスココアを吸う音のみが部屋に響いた。
 「…あ、サスケ甘いの駄目じゃん」
 「まぁな・・・というか何故お前が俺の好物を知っている?」
 「・・・勘?」
 「何で疑問文なん…」
コンコン
サスケが言葉を言いかけた時、再びドアがノックされた。
当然の如くドアを開け放ち、入って来たおばばは手に持った麦茶をサスケの前に置くと、ここぞとばかりに去っ・・・
 「ヲイ!!」
 「なぁに?サチちゃん」
 「なぁに?じゃねーよ。何回も部屋入ったり出たり…鬱陶しい・・・しかも、会話を聞くな!甘いもの駄目っていう要望に答えて麦茶持ってこなくていいわ!!・・・いかがわしいことなんてしてないから!」
 「あらやだ!いかがわしいことですって?最近の若者はいやねー」
・・・・・・うぜー。
 「とりあえず出てって」
出ていけとだけ言うと…
 「(ちっ)…じゃあごゆっくり」
小さく舌打ちをしながらおばばは部屋を後にした。
その後、鬱陶しいおばばは姿を見せなくなった。
1年ぶりにあって早々におばばのことを鬱陶しいという私はどうかと思うけど。

まぁしかし、おばばが来なくなって色々考えるも、いい案は出なかった。
 「…あっ、もうこんな時間?」
私がふと壁にある時計に目をやると時刻はすでに11時を差していた。
サスケはというとうつむきながら考えふけていた。
 「あっそだ。今日はもう遅いし、サッスンどこで寝る?」
 「・・・」
 「あれ?サス、け・・・って寝るってそういう意味じゃないからね!ははは、勘違いしないでくれたまえ」
 「・・・」
返答は、無い。
 「・・・」
ここまで無言を決め込まれてしまうと私も意識をしてしまう。
ちらりとにやけながらサスケを盗み見る。
垂れた漆黒の髪が艶を出していて、うつむいてはいるがスッと通った鼻が何というかなかなかである。
・・・何か緊張というか私の心臓の鼓動が忙しいというかサスケはかっこよ過ぎるというか…
 「・・・サ、スケ?」
 「・・・ス−」
 「・・・?」
…スー?
あれ?何?スー…って
恐る恐るサスケの顔を下から覗き込んでみると目は伏せられ、まつ毛が真っ直ぐ線を引いていた。
・・・寝てるし。

がっくりと肩を落とす私。
うつむき、眠るサスケ。
外見は16歳位でも中身はまだ12、3歳ということを痛感した。
まぁ1日で色々あったしね。
葬儀の後、真白に変な術かけられてこっちに飛ばされ、私の家でどうするか考えふけた。
…疲れて当たり前か。

そんなことを思っていると私にも睡魔が襲って来た。
何とか睡魔を振り払おうとしたが、それもむなしく私は下に敷いてあるカーペットに身を預け、眠り始めたのだった。

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あきゅろす。
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