黒白ノ風
130 同顔
木々を縫うようにしてつき進む。
腕が葉っぱで切れようとも構わない。
足が枝に引っかかろうとも構わない。
がむしゃらに気配のある方向へと向かった。
「・・・!!」
向かった先で私は驚くべき光景を目の当たりにし、言葉を失った。
周辺に散りばめられた血痕の数々。
その中心にほかじいは眠るようにして横たわっていたのだ。
一応確認するが、もう息はない。
何故だか死に顔が再不ちゃんの死に顔と、重なった。
幸せそうな顔をして永遠の眠りについているかのようなところが益々といった感じである。
「・・・」
おもむろに暗部の面を外した。
掴む気力もない私の手から面はするりと滑り、
カラン
という乾いた音を発して地面に落ちた。
泣きたかったが、ショックが大きすぎたのか涙は出なかった。
ほかじいを抱き起こし、真っ直ぐに横たわらせた。
冷たい体が私を責める。
・・・身寄りのなく、出身地も定かではない私を木の葉の里に住ませてくれた。
しかもアカデミーにまで通わせてもらい、私にきたナルトからの暗部への誘いをもほかじいは承諾し、暗部への入隊も認めてくれた。
私は暗殺が出来ないので暗殺の任務が回ってきたらナルトに頼んでいた。
しかし、それもほかじいは汲み取って私に暗殺の任務を回さないようにもしてくれた。
私はというと、そのほかじいの行動に応えようと任務を一段とこなした。
恩返しである。
しかし、その恩返しの途中でほかじいは・・・
失わなくても分かる。
失えばもっと分かってしまう。
この人の大切さが。
「・・・火影様は…?」
不意に横から声が飛んできた。
あぁ、そうか。と思う。
私は暗部の格好をしていたのだ。
聞かれて当たり前…か。
「…この通りだ」
声の飛んできた方向を向き、返答した。
横にいたのはカカシ先生だった。
どうせ暗部の格好をしているので正体はばれないから話しても大丈夫だろう。
面を付けているので酷い顔も見られずに済む。
そう思っていた。
「・・・サチ…?」
「…何を言っている」
分かるはずがない。
おかしい・・・
平静を装い、カカシ先生に言葉を飛ばした。
「…顔モロ出てるよ?」
カカシ先生の返答で少し固まる。
「・・・ぁ」
さっき面、外したんだった…
・・・でも、そんなことはどうでもいいや。
私はうつむく。
「・・・」
カカシ先生は更に言葉を続けようとしたのだが、私の顔を見てやめたらしい。
私はよほど酷い顔をしているのだと思う。
「サチよ・・・」
真白もこの場に駆けつけた。
「真白たん・・・」
「・・・帰るか」
「・・・ん」
この後の事は覚えていない。
何をしていたか、何を思っていたのかも…
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