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黒白ノ風
122 僅光
・・・遅かった。
何でいつもあと一歩というところで掴み損ねてしまうのだろう。
そうやってうなだれながら急いでハヤテさんのもとへと駆け寄った私。
地面に咲いた血の花はまだ乾いておらず、丸いドームのような建物を這うようにして流れ出ていた。

・・・攻撃を受けたのはまだ最近か。
血の凝固具合により、攻撃をくらってから時間があまり経っていないように見える。

 「ぅ・・・」
不意に下から人の声。
ハヤテさんが苦痛の表情を浮かべながら息も途切れ途切れにうなった。
!!…まだ生きてる!
 「…だ、れ・・・」
私の足音に気がついたのであろうハヤテさんは苦痛の表情を浮かべながらも私に問いた。
 「・・・えー、と…」
誰って言われましても…
水野サチですけど。
子供が夜中にこんな場所にうろついてるわけないよなー。…どうしよ。

あっ、そだ!
私は咄嗟に印を組んだ。
ボンッ
すると辺りに白煙が立ち込め、私はそれに包まれた。
変化の術である。
何に変化したのかというと、暗部の格好である。
これならまぁ、ある程度怪しまれずに済む。
 「…私は通りすがりの暗部の者だ」
通りすがりの暗部?何だそれ。
 「おと、と…す、なが、つなが・・・って…ゲホッ!」
ハヤテさんは要約だけを私に伝えようとしているのだが、途中の吐血によってそれは遮られた。
 「だいたいの話は分かります。もう喋らないで下さい」
そう言いながら、応急処置を施す私。
応急処置がおおかた終わり、私はハヤテさんを背負った。
布伝いに感じる体温、鼓動。
この命を繋ぎ止めるには一刻も早く病院に行かなくては。
 「もう、わた…し、は・・・だ、めで…」
 「はい、喋らない!今死んだら彼女(?)が悲しがりますよ?」
 「・・・」
ハヤテさんが少し落ち着いたところで瞬身の術を使用し、木の葉病院へと向かった。

様々な建物がひっそりと立ち並ぶ木の葉病院の周辺。
夜という時間帯なのでひっそりさが更に引き立っていた。
キィ
そう音を立て、私は病院の扉を開け放った。
受付には1人の看護婦さん。
もう深夜だというのにその人は書類の類のものをせわしなく整理していた。
 「すいません、急患です」
私がそう言うと看護婦さんが顔をあげた。
瞬間、その表情は驚愕のものに変わっていた。
それもそのはず、暗部の格好をした者が血のしたたる重傷者を背負っていたのだからそれは当たり前といえよう。
 「こちら受付、重傷者が・・・」
しかし、次に見た時、看護婦さんは他の場所へと連絡を取っていた。

 「・・・ふぅ…」
これでもう、大丈夫かな?良かった。
 「・・あり、がとう…ご、ざいます」
 「いーえ」
私はゆっくりとした口調でそう言った。

少しして、院内の廊下の奥からばたばたとせわしなく足音が聞こえてきた。
医療班のお出ましか。
私はもうここでいいかな?
そう思い、近くにあったソファーへとハヤテさんを横たわらせた。
 「ではこれで」
そう呟き、私は入って来た扉から病院の外へと出て行ったのであった。

 「用事は済んだのか?」
病院の外にいたのは真白。
どうやら私が出て来るのを待っていてくれたようだ。
 「うん、済んだよ!」
 「ならば修行再開といくか」
 「うん!」

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