黒白ノ風
121 血臭
昼間、ほかじいにお守りを渡した。
その後にわざわざほかじいに描いてもらった地図を頼りに桔梗城の場所を探索したのだが、なかなか見つからない。
地図が間違っているのかと思ってみる。
しかし、長年木の葉隠れの里で暮らしていてこの辺りの地理に詳しいほかじいが地図を描き間違えるはずもない。
おそらく間違っているのは私であろう。
いくらほかじいにお守りを渡すとはいえ、ろくに地図も読めないのについでといって地図を描いてもらう。
何とも無謀なことを言ったものかと自己嫌悪に陥っているあたりだ。
辺りはもうすでに闇に染まり、大きな満月が私を見下ろしていた。
満月…それの月明かりの明るさは辺りの様子が伺えるほどである。
今日のはずだ…早くしないとハヤテさんが…
桔梗城桔梗城…
大きな天守閣があるお城で…
ってこんなことで分かる訳ないでしょ。
「あー、どうしよ!」
ここに来て頭を抱えながら考えにふける。
「遅いぞサチよ」
丁度頭をかきむしる寸前である。
下方から真白の声がしたのだ。
期待感に胸を踊らせ下を見るとやはり真白がいた。
私の帰りがあまりにも遅いためか迎えに来てくれたのであろう。
「わー!!真白たーん!」
私は半泣きで真白にしがみついた。
「・・・なんだ?」
すると真白は眉をひそめて私を見やった。
「桔梗城って知ってる?」
真白なら知っているだろう。
年齢不詳だが、強いし何年も生きているという威厳というかそんなようなものが感じ取れるから。
きっと木の葉の地理にも詳しいであろう…そう思ったので聞いてみたのだ。
「・・・知らぬ。何だ?最近出来た城か?」
しかし真白は私の期待を見事なまでにぶち壊してくれた。
最近出来た城か?ってキミね…
最近ってどの最近だよ。細菌?
まさか100年、200年前とかじゃああるまいな。
幾ら年齢不詳といってもこれは行き過ぎである。
・・・はぁ、終わった。
肩をがっくりと落とし、次の工程を考え始めた私。
しかし、考えつくものは非現実的なものばかりである。
例えば絶対に桔梗城の場所を知っているであろうナルトを口寄せする…などである。不可能に近い、というより不可能だ。
「サチよ」
不意に真白が口を開いた。
「ん、何か思い出した!?」
「違う。期待を裏切るようで済まないな」
「なんだ…」
「血のにおいがする」
血…?どーでも・・・よくない!!
「それ、どこ!?」
「ここから卯の刻50m以内でだ」
「卯の刻って何!?」
「東だ」
真白からそのことを聞くやいなや私は走り出した。
「乗れ、サチよ」
全力で走る私の横では真白がいつの間にか狼の姿へと変貌を遂げて走っていた。
「ありがと」
そう口を開くと私は真白に飛び乗った。
私は真白に乗り、瞬く間に血のにおいのする方向へと疾走したのだった。
「ついたぞ」
ものの10秒もしないうちに真白より声がかかった。
私は急いでここまで運んでくれた真白から飛び降り、辺りの様子を探った。
・・・城…城がある。
大きなシャチホコが2体飾られている・・・
ここが桔梗城だ。
ほかじいから貰った地図と比較してみても丁度地形が当てはまる。
ハヤテさんは…
・・・人の気配を探ってみたところ、城の向こうに人の気配がするのが感じ取れた。
私は城の壁を登り、城の屋根まで登った。
そこで衝撃的なものを目撃した。
屋根に大きな爪跡が残されていたのだ。
まるで動物に引っかかれたかのような爪の跡。
大きさも普通の動物とは比ではない。
その爪跡をまるで彩るかのように赤がぶちまけられていた。
近場には私と本選で戦うはずのドス。
死んでいることは火を見るよりも明らかだ。
そこよりもっと先に目をやるとパイプのよく通った丸いドーム形の建物に大の字で横たわる人。
その人の下には真っ赤な鮮血が花を咲かせていた。
その血はとどやることを知らずか未だにツー…と、流れていた。
その人は、ハヤテさんだったのだ。
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