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黒白ノ風
120 口実
人通りはそれ程までに無いひっそりとした廊下。
基本木造りの建物。
床の木目調は不規則的に並び、左右両側の壁には掛け軸や巻物が規則的に貼りついている。
そんな場所をは歩いていた。
今は真白との修行の合間を縫いながらここにいる。
1ヶ月しかない時間の合間を縫う・・・それ程までに大切な用件なのである。

コッ…ガチャ
 「しつれー」
私はノックを0、5回程度し、ドアを開け放った。
同時にぶっきらぼうにしつれー、などとも言ってみた。
ドアの向こうには机と人。
その人は机に向かって黙々と顔を向け、巻物に文字を書き揃えている。
私の存在に気づくと顔を上げ、
 「サチか、どうかしたのか?」
と問われた。
先程まで巻物に向かっていた人物は3代目火影、ほかじいである。

 「んー、そんな重大じゃないんだけどさ、桔梗城って知ってる?」
私は急ぎの電報などではないことを伝えると唐突に、そして手短に問いた。
桔梗城とはハヤテさんの亡くなった場所である。
原作ではその桔梗城のかたわらで倒れていたはずなのだ。

 「?…知って、おるが…」
ほかじいは頭に?マークを浮かべながら途切れ途切れだ。
今更そんなことを聞いて何がしたい?そういった感じである。
 「ちっとそこに用があってね」
 「…そうか、少し待っておれ。地図を描いてやる」
そう呟くとほかじいは新しい巻物を取り出して筆を走らせた。
筆が紙を走り、地図になっていく様は何とも楽しい。
私は筆を目で追った。

 「第7班はどうじゃ?」
少しの沈黙の後、地図をすらすらと描くほかじいが私に問う。
 「楽しい。その言葉しか当てはまらないよ」
それを当然の如く答えた。
 「なによりじゃ」
するとほかじいはにこ、と微笑みながら呟いた。
 「・・・いきなり気持ち悪いなー。何、末期?」
 「ほほ、そうかもな。ほれ、地図じゃ」
ひゅっ
とほかじいは桔梗城の地図が記してある巻物を私に投げた。
それは空中でくるくると回り、放物線を描いて真っ直ぐ私に向かっている。
 「せんきゅー」
私はその飛んで来た巻物をがっしりと掴み、礼を述べた。
 「んじゃ、私からお礼ね」
私は懐を探り、お目当ての物を取り出すとほかじいのいる机の前まで行く。
そして手の中に収まっている物を卓上に静かに置いた。
私の手がどいた場所にあるのは四角い厚紙のようなもの。
 「何じゃ?これは」
 「お守り。電話番号でも書いておけば、いきなりボケても安心だよ」
 「・・・年寄りを馬鹿にしおって…まぁいい、貰っておくの」
ほかじいは厚紙のようなお守りに手を伸ばし、懐に忍ばせた。
 「じゃ、またねv」
 「用が無くともまた来いの」
 「うん!」
そう残し、私は火影邸を後にした。

火影邸の周辺で喜ぶ者が1人。私である。
完璧だ。
お守りを渡せた。しかもほかじいはそれを懐に入れた。
このほかじいとのやり取り本当の目的はお守りを渡すこと。
桔梗城の場所などナルトにでも聞けば分かることなのだ。
それなのにわざわざほかじいに場所を聞き、お礼を口実にお守りを渡す。
この行動が最も重要なのだ。
この私の行動の結果はまだ分からない。どうなるかは私の行動次第だ。

私は巻物を広げ、夜に備えて桔梗城の場所を探すのだった。

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