[携帯モード] [URL送信]

黒白ノ風
110 視界
・・・何も見えない。
目を上下左右に動かしてみるものの、光すら入ってこない状態だ。

…侮り過ぎた。
スパイという立場上、カブトは何もしてこないと思ったのだが、この通り私は目を見えなくされた。
取りあえずこの目が見えなくなるものは一時的であることを願いたい。

・・・それにしても本当に何も見えない。
耳、鼻は使える。あとは相手の気配を読めば何とかなるかもしれない。
私はわずかな音に耳を傾け、どうせ見えないので目をつむり、神経を研ぎ澄ました。
聞こえるのはギャラリーの話し声。感覚でいうと試験場内のホコリっぽい感じ。
などが感じとれた。
・・・
カブトはなかなかこない。
様子を見るにしては少しばかり長い。
……いや、来た。
・・・後ろだ!
私は足を後ろへと振り上げ、まるで馬が物を蹴るように蹴り上げた。
ガッ
 「くっ」
当たった。
少しかすっただけだが、これなら行けるような気がする。
私はまたも次の攻撃に備えて神経を研ぎ澄ました。
大丈夫だ。冷静に考えれば見切れる。
・・・次は…
僅かにタッタッ…という足音音がする。
この足音的に右斜め後ろ。
…?あれ、違う。
前?左も??
 「ぐっ!」
右の脇腹に衝撃が走った。
攻撃をモロにくらい、そのまま地面へと倒れ込んだ。
…いってぇなこのやろう。
・・・やはり分が悪い。
こちらは目が見えない。だが、あちらは見える。
先程のように私の攻撃が相手に当たったとしても距離感などがあまり掴めないため、少しかする程度。
しかし、向こうは視界100%のため、距離感などもある。
攻撃が当たればそれなりにいい場所へとヒットする。

・・・どうする。
こんな視界が無い戦いは霧隠れの再不ちゃんと戦った時以来だ。
その時は霧だったのでどうにかできた。
しかし今回ばかりはどうにもならない。
…時間を稼いで目の回復を待つ…としても駄目だ。
いつ回復するかも分からない。
・・・本当にどうする…

 「サチー!!何目ェつぶって突っ立ってんだってば!!?」
・・・ナルトか。
 「何かの修行かい?ボクもなめられたものだね」
・・・カブトだ。
てめぇがやったんだろーが。
むかつくな・・・コイツ。
絶対メガネくいっとあげてフフ…とか余裕かましてるよ。
・・・うぜー。
 「次で終わりにしようか」
そうカブトは私に言い放つ。

私の中で何かが崩れた。
というよりそうせざるおえない状況下にある。
別に外観的に何かが崩れたとかそういうわけではない。
私の中の理想というか自分で決めた規範が崩れたのだ。
規範とは、この予選であまり目立たないことである。
地味に普通に素朴に試合をさっさと終わらせようとしていた私。
よく考えてみればこの中忍試験を1人で受けている時点で目立っているのだ。

 「次で終わり…ね。さて、終わるのはどっちでしょーか?」
先程のカブトの発言をあざけるかのように言い放った。
 「強がりはよしなよ」
そう言うとカブトが動き始めた。
声がした方向は後ろ斜め左。
距離もある。だいたい10m前後。
私はカブトのいる場所と私との距離をはかり、印を結び始めたのだった。

[←][→]

23/45ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!