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黒白ノ風
109 侮過
私は試合をするべくギャラリーから下へと降りた。
先程までは試合を傍観する側だったのだが、今や傍観される側になっている。
・・・え、ちょっと待てよ。
早くないか?
早いよな。もう少し遅くても良いじゃん。
心の準備が…
あっ、変な汗出てきた。
 「開始!」
無残にもハヤテさんの口からは試合開始の合図が告げられた。
軽くパニック状態である。

先に動いたのは言うまでもなくカブトである。
先ずはこてしらべといったところか、クナイを3本投げてきた。
 「うぉっ」
私はそれを当たり前の如くよける。
クナイをよけるべく少し動いたことにより、しだいに心は正常になってきた。
もういいや、心の準備なんて要らね。
私の使命(?)はカブトをボコる。それだけだ。

 「よっしゃあ!!」
そうやって雄叫ぶと私は足にチャクラをため始め、同時に握り拳にも多すぎるほどチャクラをため込んだ。
この中忍試験第3試験予選、あまり目立って警戒をされたくない。
ここは地味に、普通に試合をしよう。

そう頭で考え、地面を蹴った。
右足、左足、右足…と地面を蹴る。
どんどん加速してきた。
カブトの近くまで目にも止まらぬ速さで向かう。
この時点でカブトは私の攻撃をガードしようと腕を前に出している。
しかし、そんな防御体制万全の場所に拳をくらわすほど私は馬鹿ではない。
足にぐっと力を込め、カブトの背後へと素早く回り込んだ。
そして背後からチャクラをためた重い拳をカブトへと放った。
 「ぐあっ」
そう口から発し、カブトは地面にひびを入れながら後方へと飛ぶ。
ぐへっ、などと言葉を発して壁に突っ込んだ様は何とも痛々しい。
 「やべ、力いれ過ぎた」
私はそうぼやいた。
フルパワーではないがそれなりにチャクラを込めて放った重い拳。
しかもそれが無防備の背中にクリーンヒットしたのだ。
いくら強いといえどもカブトの安否が心配なところである。

試験場内の壁。そこにカブトはうつぶせになって横たわっている。
ハヤテさんが状態を確認しに行ったが、途中で戻って来た。
カブトが起き上がったからである。
よろよろと痛むであろう体を起こしながら起き上がったのだ。

 「フー、強いね君」
フレームのよれたメガネをかけ直し、カブトはゆっくりとした口調で言った。
・・・ここまでしてもまだスパイという裏の顔を見せないままでいるのか。

そんなことを思っていると
・・・あれ?
私の視界に黒いもやがかかり始めた。
……?視界が、悪い?
ゴミでも入ったのかと思い、目をこすってみた。
しかしそんなことをしても視界は晴れるはずもなく、未だに黒々としたもやが濃くなっている。
・・・おかしい。
術はかけられていないのに。
カブトに拳を放った時、何かされたのか?
それにしては巧妙だ。
私は視界が悪くなった目でカブトを見やった。
すると、カブトが不敵に笑っているように見えた。
視界が無くなる一歩手前であった。
またそれから少しすると私の視界は全て漆黒の黒で染まったのだった。

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あきゅろす。
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