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黒白ノ風
104 散乱
 「到着ー!」
あれからものの数分でこの目の前にある塔へと到着した。
ここに来るまでの森の中、これといって目立った事はなかった。
まぁそこは喜ばしいところ。
今私の目の前にあるのは塔。
その入口は沢山あり、扉の真ん中には“開”と1文字だけ書かれた札が1枚貼ってあった。
この扉の横にある扉もその隣の扉もそうなっていた。
おそらく他の受験者と鉢合わせないようにこんな仕様になっているのだろう。
せっかく巻物手に入れてゴールしたというのにゴールであるはずの塔で戦闘に突入したらたまったものではない。

 「よし」
私はドアノブに手をかけ、ビッと札を破きながら木製のドアを開いた。
ギィ
そう音を発し、ドアは私の力に従って開放される。

中はしんと静まり、ただ壁に中忍心得と書かれた張り紙があるばかりだった。
その他は目立ったものは置いていない。
床は石造りで部屋の殺伐さをさらに引き立てていた。
そんな殺伐とした風景が私の心を落ち着かせるのが分かった。
第2試験は終わったのだと。

 「ふぅ、これめくるんだっけ?」
私はひとつ大きなため息をつき、真白に問いた。
 「そうだと思うぞ」
 「ん、じゃあ・・・」
そう呟き、巻物に手をかけた。
…そう言えばこれ開くと人が出てくるんだよね。…誰だろう。
ペリ
そう思っている間もどんどん巻物を開いていく。
ぁーあの人ではないことを祈りたい。
せめてイルカ先生がいい。
イルカ先生イルカ先生…
心の中で願をかけながら巻物をほぼめくり終わったころ、
シュウウ
…そう音を立て、開いた巻物からしだいに白煙が立ちこめ始めた。
…この時点で誰が出現するかは気配などを読めば大方予想がつく。
この雰囲気…
 「うげ!この気配は!!最悪!」
そう言うが早いか私はチャクラをためた足で地面にかかと落としをかました。
ズゴッ
すると地面は綺麗な穴を作り、辺りにはバラバラになったアスファルトが散乱していた。
真白は私の一連の行動をいぶかしげに見ている。
 「・・・」
何をしておるのだ?とでも言いたそうな、そんな真白を横目に私はその綺麗に空いた穴ボコに巻物を放り込んだ。
穴の深さは2m程度あり、丁度大人がすっぽりと入れそうな大きさだった。

ボン!
少しすると穴の中から大きな白煙と共に人が現れた。
その人は予想通り、カカシ先生だったのだ。
しかし、そのカカシ先生は頭のみ。
頭以外の上半身、下半身は地面の下である。
しかもなかなか脱出できなさそうなご様子。
 「・・・やっぱりサチ意図的にやってるでしょ」
 「え?まさか!カカシ先生への愛情っすよ」
 「どこに好きな人地面に埋める奴がいるんだ?」
 「え、ここに」
私は当然の如く、微笑みながら自分を指差した。
 「・・・ま!とりあえず第2試験突破オメデト」
そうカカシ先生は地面から頭だけを出し、笑ってみせる。
それにしてもそんな格好でオメデトなんて言われても微塵にも喜べないんですけど。

まぁ一応喜んでおくか。
 「やった!・・・よし、真白たん!帰るれ」
 「そうだな」
 「んーサチ、何がよし、なの?俺の状態見てからよしとか言おうよ」
 「次の試験何だろうね」
 「そうだな、サチよ」
 「ねぇちょっと!あの!ちょ待って!!」
カカシ先生は動かない手足を何とか動かそうと地中でもがく。
しかしそんなことをしても何も変わらない。
そんなカカシ先生の状態もわけないような素振りで私達は塔を後にしようとする。
 「地面から体抜けないんだけど…ちょまってってば!マジお願い!!」
そんなカカシ先生の嘆願も虚しく閉められたドア。
塔の中にいるものは頭のみが地面から出ている哀れな上忍だけであった。
その後の上忍の行動は誰も知らない。

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