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黒白ノ風
100 兎蹴
 「ぬぁぁああ!!」
絶叫が森にこだます。
 「うへぇぇい!!!く、ク、クク!!」
自分自身が今撫でているものを見て硬直状態の私。
手をどけたいのだが、動かない。
まるで金縛りにでもあっているかのようだった。
開いた口が塞がらないというのはこういうことであろう。

そんな私を見かねた真白は私の肩の上をつたって私が手を置いている物体に近づいた。
私が絶叫している原因を私の肩から蹴落とした。
そして
 「全く。ただの蜘蛛ではないか」
と、口を開いたままの私の方を向いてそう言った。
真白の言う通り、私の肩に乗っていたものは蜘蛛。しかも30cm位の。
おそらく、真白が突風を起こした拍子に木から落ちてきたのであろう。

それにせよ、30cmは異常だ。
真白たんからしてみればただの蜘蛛かもしれないが、私はあんな大きい蜘蛛初めて見た。しかも間近で。
あんなん日本にいなかったよ。
何食べて生きてるんだよ。
とつっこみを入れたいほどである。

まぁ、この時の真白たんは惚れてしまいそうなほどかっこよかった。
 「真白たん、ありがとう!!」
そうお礼を言った私の目は血走っていたに違いない。
 「…あ、あぁ」
この通り真白たんは引き気味だ。

 「あ!時間くった!行くよ真白たん」
そう言い、私はまたもゲート12に向けて走り出したのだった。
あれほど叫んだというのに敵の気配はなく、鬱蒼とした森の中を颯爽と駆けるのだった。

 「ぁ」
真白が呟いた。
 「ぇ」
それに便乗して私も呟く。
 「サチよ、スピードを緩めるでないぞ」
 「ぇ?うん…何で?」
 「サチ、おぬしは見ない方がよい」
 「ぇ?」
見るなと言われると見たくなってしまうのが私である。
私はおそるおそる後方へと目を向けた。
目に飛び込んで来たものは…衝撃的なものだった。
先程の蜘蛛が木々にゴスゴスとぶつかりながら私の後ろをぴったりとついて来ているものだったのだ。
うわ!蜘蛛さーん!
ストーキングはやめておくれ!
そう叫びたい気分になったがスピードを保つために必死だ。
私の体のどこかに糸でも付いているのであろうか。
そうだったら糸の強度が強い。強すぎるぞ。
やべーよあの蜘蛛。
地獄の底まで追いかけてくるつもりだよ。
私にはそんな風に見える。

 「サチ危っ」
ゴツッ
 「うぼっ」
突然の衝撃。
真白たんが今言いたかったことが今になって分かる。
きっと「サチ危ない、木にぶつかる」といったそんな感じであろう。
木にぶつかり、頭を抑えて痛みにこらえている上に第2の衝撃が上からやってきた。
ダブルパンチだ。
そんなことを思っていると蜘蛛が足をサカサカと動かしながら飛んできて、まぁ、着地したのかは定かではない。
 「ギャァァー!!」
本日2度目の絶叫が森で響いたのであった。

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