こんな恋も悪くはない!
バッチリと聞かれていた
何か言ったら殺すぞと言われた私が何か言ったのを、サソリさんはバッチリと聞いていたのだ
これは殺されかねない。
「本当に懲りねー奴だな」
と思ったらサソリさんは全く戦意を感じさせない緩みきった声で、フッと笑った。
サソリさんらしくない。
それもそうだ。今サソリさんの体は私なのだから。
サソリさんがサソリさんらしくないのは、サソリさんの体が私であるのだから無理はない。
「懲りないですよ。だって」
今まで殺されたいかと言っては殺そうとしない、サソリさんらしくないサソリさんばかり見てきた。それは私とサソリさんが共同体だからだ。
「だって、これで良かったと本当に思うんですからね」
分かっていながらサソリさんらしくないサソリさんに恋して良かったと思う自分が居た。
やっぱり悪いと思う時だってあったけれど、サソリさんらしくないサソリさんばかり見ていればこそ悪くないと思わせた。
「サソリさんは……どうなんですか」
「ああ?」
全く答えてくれる気が感じられない返事を返された。サソリさんらしい。
この時のサソリさんは、やっぱり悪いかもしれないと思わせるサソリさんだ。
と思ったのに、やっぱり良いかもしれない。
「悪くねーかもな」
「!それは何に対しての悪くない、ですかサソリさん!」
「同じ事を二度言うつもりはねーと何度も言わせるな」
「それこそ二度言うくらいなら他にもっと大切な事を二度言って下さいよサソリさん!」
「一度言えば十分だろうが」
大切な事は一度伝えれば十分だと一度だけ言うサソリさんに、確かにそうだと一度で納得した
けれど何度も言うが今私の体はサソリさんである。 生憎この体が、納得してくれない。
「今確かに言いましたよねサソリさん、悪くないって言いましたよねサソリさん」
「二度も言うな殺すぞ」
「その言葉は何度言っても悪いですが無理ですサソリさん!殺せない体なんですからね」
こんな恋をするのも悪くはないとサソリさんが言うなんて、納得しても良いのだろうか。
「やっぱり良くねーな」
と思ったら良くないと言われた
納得だ。
「えーどっちなんですかサソリさん」
「ああ?」
この返事は、悪いかもしれないと思わせる返事だ。
けれどサソリさんは言う。
二度も同じ事を言うつもりはないのだと。大切な事は一度伝えれば十分だと、サソリさんは言った。それってつまり。
「悪くはないんですね!」
こんな恋も悪くはない!って事ですよねサソリさん。
おわり
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