馬鹿みたいで馬鹿じゃない
「もうやめだ」
あの馬鹿たちのせいで、サソリさんまで馬鹿な事をしたと言いだした。サソリさんは何も馬鹿な事はしていないのに、馬鹿なあいつらのせいだ。
「そんな事言わずにしましょうよサソリさん…!」
「するか」
する訳ないだろという意味でのするかを言われた。これは本当にする気がないらしい。
もう少しでサソリさんとキスが出来たのに。空気の読める馬鹿も空気の読めない馬鹿も大嫌いだ。
「確かにサソリさんとキスできるなんて夢みたいな話が現実にあるなら、それこそ夢みたいな話ですよね…」
まさか夢じゃないかと頬を抓ってみた。
あれ、全然痛くない。
「夢…!」
「馬鹿かテメーは。自分の体を何だと思ってやがる」
「あ」
サソリさんだった。
通りで痛くないはずだ。
夢だと思ったのに。
サソリさんとキス出来そうになったのも、私がサソリさんの体になってしまったのも。
「夢じゃないんですね」
「今更何言ってんだ」
馬鹿みたいだとサソリさんは笑った。
確かに馬鹿みたいな話だと笑うしかない。
はじめは馬鹿みたいに笑えなかった話が今じゃ馬鹿みたいに笑えるのだから。
「本当に夢みたいです」
私の体をしたあのサソリさんが、私の体のまま笑ってるなんて馬鹿みたいな本当の話、夢みたいで笑える。
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