恋する人間の力
恋の力とは偉大だ。
「あ、ありがとうデイダラ」
結構キツイ任務なのに、とても楽に片付いてしまったのだから。 それもデイダラの、恋の力というもので。
「気にすんな、旦那。こんくらいたいしたことねーよ」
さすがは恋する人間。
キツイはずなのに、キツそうな顔一つ見せない。好きな人の前では格好良くありたいものである。
「よし、そろそろ引き上げようぜ」
「え……でもキツイでしょデイダラ。無理せず休憩してからにしようよ」
「え」
やっぱりキツイにはキツかったデイダラは足を止めた。
忘れていたキツイ体を思い出したからこそ止めたのだと思いたいが、自分がサソリさんの体してるという事を思い出してハッとする。
「あ……」
サソリさんは、待つのも待たせるのも嫌いだと忘れていた。
休憩しようだなんてサソリさんなら言わない。
「サソリの旦那、」
「お、おお。何だよちょんまげ野郎」
「…………………。」
今更サソリさんらしい事を言っても遅いであろう。
いつもならギリギリ間に合うのだが、デイダラの疑い深い眼差しはギリギリアウトだと言っていた。
「サソリの旦那、」
「お、おお……………」
何を言われるんだ。
何を言われてもおかしくはないばかりに、覚悟を決めた。
「休憩って、どっかに泊まるんだよな」
「は?」
「そういう意味じゃねーのかよ……って事は野宿か?」
「は?」
「いや、だからさ、休んでからアジト行くって日付変わっちまうぞ」
「は?」
「だから!二人でどっかに泊まってから帰るんだよなって聞いてんだよ!」
そんな事を言われる覚悟はしていません。
さすがは恋する人間。
恋した人間に夢中すぎる。
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