心配になったり、ならなかったり。
「戻らねーのか、名前の野郎……」
それは自分の体が戻らない事に心配なのか。それとも、名前が戻らない事に心配なのかは明らかだった。
「オイオイ、どこ行く気だよ」
「ああ?三日も待ってられるか。あいつは…」
見た目はサソリさんだが、中身は名前とは言えず。
「あいつは名前ちゃんの大切な人だって言いてーのかよ?」
「ふざけてんのか」
けれどサソリさんは、そんな事言う訳がないとだけは言った。サソリさんが、サソリさんの体を大切にしている事だけは明らかだ。
「だってよ、今どこに居るかも分かんねーサソリをわざわざ探しに行くって事だろ?」
「それが何だ」
「いや、だからさ」
だから大切なんだろと飛段は言う。もちろんサソリさんは大切にしているが、それは言葉通りサソリさんを大切にしているのだと飛段は知らない。
「そんなに心配するって事は、サソリが大切なんじゃねーのかよ」
「な訳、」
無いとは言えず。
確かにサソリさんはサソリさんが心配なのだ。
というのも見た目だけはサソリさんの体、しかし中身は名前である。三日もキツイ任務だなんて、核の安否さえキツイかもしれない。
「心配じゃねーなら探しに行く必要もねーだろ、名前ちゃんよォ」
一方名前の体ではあるが中身は待つ事を知らないサソリさんだと、飛段も知らない。
されど中身は待つ事を知らないサソリさんだ。待ってろと言われて大人しく待つはずがない。
「…………………。」
と思ったらサソリさん、大人しく待った。
「確かに、テメーの言葉も一理ある」
「だろ?」
どうやらこの馬鹿が、サソリさんに待つ事を教えたらしい。馬鹿だが利口かもしれない。
「確かに、あいつの事を心配なんかしちゃいねーな」
サソリさんが心配なのはあくまで、サソリさんの体をした私ではなく。
サソリさんの体自身なんです。
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