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悪夢のはじまり

「旦那が待たせるなんてらしくねーな、うん」

何という事に。まさか、こんな夜更けにこいつなんかと任務だなんて。

夢のような一時が一気に悪夢へと変わった。


「それより旦那、ヒルコに入らなくて良いのかよ?」

「馬鹿っ本体が良いんだよ!ヒルコに引きこもってりゃサソリさんの魅力が台なしに……!」

「……………え?」

しまった。
夢の一時がこいつによって幕を閉じたばかりについ、当たってしまった。
おまけに体が入れ代わってるなんて夢にも思っていないこいつからしてみれば今の発言、自画自賛だ。


「ヒルコは…そうだ、今メンテナンス中なんだよ」

「…そ、そうなのか」

こんな夜中に?というツッコミはさておいてくれた。

まさか体が入れ代わっているだなんて夢にも思っていないであろうが、薄々このサソリはおかしいと感づいているのかもしれない。

「精々核ぶっ潰されねーようにな、旦那」

今日の旦那は何かおかしいからと付け足すこいつ。

中身が私だと知らないであれ、サソリの旦那にそんな事を言えるとは……
今日のこいつも、いつもと違う何かを感じる。


「あ……核」

「核がどうした、旦那」

そいつはあながち、いつもと違う自分というものに気づかせようとしてくれたのかもしれない
いつもと違う、サソリさんの体をした自分というものに。


「核……守り切れるのかな」

「……!え、おい旦那?何いつになく悲観的になってんだよ」




サソリさんの体だからといってサソリさんみたいに、傀儡を操れるとは限らないでしょう。

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