ただのショックだ
ショック療法からは逃れた名前、だがショックは受けていたようだ。
「はぁ、」
自分が好きな人の体になって、好きな人は自分の体になって、もっと好きになる予感がしたはずなのに。
「サソリさんなんて」
そのおかげで好きな人を嫌いになっていく予感しかしない。
何がショック療法だ。
むしろ療法なんかじゃない、ただのショックだ。
嫌いになっていく予感と嫌われていく予感しかしない。
「旦那?どうしたんだよ、また恋に悩んでんのかまさか」
「デイダラ……」
「!」
そんな予感に気付かされた時だった。
サソリさんの体だとはいえ涙も出るんだなと気付いたのは。
「ど、どうしたんだ旦那!涙なんて似合わねーぞ!」
「いいよ、そんな慰めなんかしなくても……」
「いいや!本当に涙なんて似合わねーからな!」
デイダラは慰めをしたつもりでは無かったらしい。けれど、本当に涙なんか似合わないと慰めにも似た言葉を何度も言っていた。
「どうしちまったんだよ本当に……オイラでいいなら話くらい聞くぞ」
どこかの誰かとコンビを組んでいるとはいえ、正反対だ。きっとどこかの誰かならこんな時でも「俺の体で泣きっ面なんか見せるな」だとか「殺してやる」だとか「殺すぞ」とか言うんだろうな。
なんて思うと泣けてきた。
「だからさ旦那!泣いてちゃ分かんねーだろうが!」
「デイダラ……」
「話してみろよ旦那。これでも長ェー付き合いなんだからさ、笑ったりしねーって」
デイダラはフッと笑った。どこかの誰かの悪質な笑い方とは正反対でとても清らかだ。
思わず全てをありのまま話してしまいそうになった。
好きな人にショック療法だと殺されそうになって、それにショックを受けたと。
こいつ絶対、笑うぞ。笑わないって言っても絶対に笑うぞ。
何に笑うかってそりゃ「ざまーみろ」って笑うに決まっている。
「………はぁ」
話したところでショックだ。
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