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いや、悪いでしょう

いくらそいつが好きだとは言っても。

こんな恋はしたくなかった。



「ええーと、もう一度聞いていいですかサソリさん」

「ああ?」

「あなたはサソリさんですか」

聞いていいですかサソリさんって聞いておきながら、サソリさんですかって聞くやつが居るか

そいつはそんな顔をした。


「や、やっぱりサソリさん!サソリさんだこれ!紛れもなくサソリさんだ!」


いや、私だけど!
でもやっぱりサソリさんだ

何という矛盾だろうか。いや、矛盾と言うならば「好きなのにこんな恋は嫌だ」と歎いた序盤から、矛盾だ。


こんな始まり方こそ嫌だと我ながら思っていても歎きたくなる。
だって、だって

「どどどど、どうしてサソリさんが私の体に…!」

序盤から、あのサソリさんと私の体が入れ代わっていたのだから


「いちいち騒ぐな。鬱陶しい」

「……っ!」


この有様でも騒がない平常心を持つ勇者が居るなら、見てみたい!
と思ったらここに居た。
この人天才だけでなく勇者だ


「テメーは一回、落ち着け」


ここまで平常心に言われると、逆に騒いでいるこっちが不自然だと思ってしまう。
けど健全な男女の体が入れ代わったとかなったら、騒がずにはいられないでしょう。これが普通なんだ。
普通だ、自分は普通だ。
そう言い聞かせたら何だか落ち着いてきた。

普通なのだろうかこれ。

「落ち着いて聞け」

「………?」

やっと落ち着いたところで、あの人は……
いや、私の体をした中身はあの人は言った。


「俺の体で好き勝手してんじゃねーよ。殺すぞ」



落ち着いていられなくなった。

「えッ!…は、はぁ!?ま、待って待ってサソリさんまだ好き勝手してないよ私!未遂だよ!」

確かにこいつの事を好きなのは認めましょう。

この人と体が入れ代わった今「何この美味しい展開」と思った事も、
「ならば思う存分、味わってしんぜよう」と思った事も百歩譲って認めましょう。

だけど、
まだ手は染めていない。未遂だ。


何故ならばこの状況、たった数秒前に起こってしまったのだから。


「好き勝手してんじゃねーか、俺の体で女みてーに喋りやがって……我ながら気味がわりィ」

「あー………」


そっちの意味ですか。

申し訳無いけどホッとして落ち着いた。


「ごめんなさい直します殺さないで」

あなたが殺せばあなたも死ぬ事になるから。

平常心を装っていたくせして、どうやら少しこの人もこの人で焦っていたらしい。

私の体、いや……今はサソリさんの体をした私の胸倉を掴んでいたあの人はそっと手を離した


「………いや、逆か」

「…!そういう問題じゃないでしょうがー!」


いや、それでもサソリさんが私の体に触れてくれるのなら例え胸倉を掴まれるのであれ光栄だ

けど、やっぱり



こんな恋は良くない…!

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