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サクラサク、四月4 ―連載5話。初雲雀視点。雲雀さんがよく笑ってます…?
【〜最近気になるコ。〜】





四月。新入生の入る季節。


僕は強そうな奴がいないか、そして
要チェック人物がいないか


一年生の様子をみにきていた。



ざわり。


一年生達に群がる生徒は上級生。
何をしているのかと近づいてみれば…



「なあ、あの子可愛いくね?」
「そっちの子もいいだろ」



ああ。くだらないことで騒いでるね。

咬み殺そうかな。



「っ、あの子超美人!」
「本当だ」
「一人で何してるのかな」



一際うるさく騒ぐ群れの視線の先を追うと―



きょろきょろ。



辺りを見回す少女。新入生だ。
何か、もしくは誰かを探しているようだった。

確かに端正な顔立ちをしている。



だが、僕は興味ない。


彼女は僕のいる方角とは逆の道を歩いていく。

背中まである長い黒髪が風に遊ばれてさらりと揺れた。



「ちょっとあの子に声かけてみようぜ!」
「デートのお誘いってな♪」


ぴくり。


群れている彼らの発言に妙に苛立った僕。

すぐにその感情を解消すべく彼らを粛清。




―それが、僕が彼女を初めて見かけた日。







「雲雀さん、コーヒーです。」
「あの時何してたの?」

「ふぇ?」


思わず変な声出した彼女に笑った。


最近、君といるといつの間にか自分が笑っている。
ということに気付いた。


それがどうしたって言われればどうもしないけどただ…

いらいらは減ってきたから氷之咲と居るのは不快じゃない、かな。


「なっ、なんで笑うんですか!ちょっと声が裏返っただけでごにょごにょ」

「何?はっきり言いなよ。」


「…声が裏返っただけで別に雲雀さんに急に声かけられて焦ったけど嬉しごにょごにょ」


だからなんなの?

「後半が聞こえない。」
「なんでもないんです!さ、仕事仕事!」


彼女はそそくさ自分の席についてしまった。


気になるじゃないか。


それでもこれ以上の問いかけは無駄かと諦める。

氷之咲にはこう見えて頑固な一面があるからね。



一度こうと心に決めて言ったことには揺るがない意思を持つ。

それが彼女と接していくうちに気付いた点の一つだった。


「そういうところは嫌いじゃないけど」

「へっ!???」



バサッ



敢えて口に出してみたら書類が見事に床に散らばった。


「何ですか急に…あ、また笑ってるっ」



彼女の驚きぶりと、むぅとしたこの顔をみたら笑みが零れた。



「…箸が転げても可笑しい状態なんですね雲雀さん。
私もう仕事するので静かにしてて下さいっ!」


つんと横を向いた彼女は散らばった書類を片付けて再度
書類整理をし始める。



(帰りに訊こうかな)
あの時何をしていたのかを。



今は何か訊いても答えてくれなさそうなので自身の書類整理にとりかかった。





「よし、終わり。では雲雀さ―」
「今日は昼ご飯一緒に食べよう。」


「!?は、はい…」


突然の申し出に戸惑った彼女の答えはそれでもYES。


「そう。それは良かった。」



昼ご飯を食べる約束をして彼女と別れた。

少し、ほんの少しだけだけど



楽しみだ。






「あの〜雲雀さん…
決してここでトンファーを使わないで下さいね?」


「そんなことしないよ。」


今日は食堂がほぼ満席状態だった。


どこを見渡しても、群れが一杯。


…咬み殺したいと本能が告げるけど
彼女に言われてしまったら仕方ない。



うん?仕方なくはないか。


「雲雀さん、今日は応接室で食べますか?」


食堂は人気があるのか混んでいることが多い。


最近彼女が僕の不満そうな顔をみて提案したのがこの方法だ。

食堂で食べずに応接室で食事して食器だけ返却しに行くというもの。


「そうだね。」

こくりと頷くと彼女に「注文してくるので
先に応接室で待っててください」と告げられた。



僕としても群れをみているとうずうずしてしまうので

大人しく応接室に帰ることにする。




「お待たせしました。今日の日替わり定食は焼き魚なので
日替わりにしてみました。良かったですか?」




「うん。早く食べたい。」

「わかりました。ちょっと待っててくださいね。」


簡易台所へお茶を淹れに行く彼女。



彼女を待っている間僕は彼女に

「これから僕の好きなメニューを選んできて」と
言った時のことをぼんやり思い出した。



「えっ、私がですか!?」
「そう。頼んだよ。」


「……好きなメニューじゃなかった場合は?」

「さあ?どうなるかな。楽しみだね。」


「ええっ!?!」


大袈裟に驚く彼女はそのあとおずおずとこう付け加えた。


「じゃあ…ずっと好きなメニューを出せたら?」
「そうだね…その時はご褒美をあげる。」


「ご褒美!?!ナンデスカご褒美って!!
(ドキドキ)」


「それはまだ考えてない。」

「…そうなんですか…(ご褒美…)」



(そんなに気になるのかな)



彼女のくるくる変わる表情。

他の者ならイラつくその表情も、彼女だけは不快にならない。


寧ろもっと見ていたいと思うほど、面白い。

(本当に変なコだよね)



決して多くはない君との思い出。
だけど考えていると自然と口の端が上がる。


湯飲みにお茶を淹れてやってきた彼女が怪訝な顔をした。


「どうしたんですか雲雀さん?」
「ちょっとね。」


「あ、箸が転げてもおかしい状態続行中ですか?」


彼女が笑って湯飲みをおいた。


「好きな子のことでも考えていたんですか?
思い出し笑い??」


他の者と同じ筈なのに、少しだけ気にいっている。
笑った顔。


「好きな子…?そんなところかもね。」
「えっ!?」


驚いて固まる彼女。


「だっ、誰のことかって……き、聞いてみていいですか?」


あ、駄目だったら全然いいんですけど…ぶつぶつ。


彼女の問いかけ。
その顔と言い方がどうしてだろうか。


ほんの少しだけど可愛いと思えてしまった。


(…小動物に似てるから?)



「教えて欲しいの?」
「はい!!」


思い切りぶんぶん首を縦に振る彼女。

また僕は微笑んで、告げた。



「僕の隣にいるコ。」

「……えっ」


最近気になるコはそう言った僕を見てぽっと顔を赤く染めた。


可愛い。


(か、からかってますね!?)
(さあ?どうだろうね?)

(聞かないでくださいっ)


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あきゅろす。
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