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理屈じゃできない優先順位。―キリリクの獄寺夢です!
最近、俺には困ってることがある―


「獄寺君、おはよう!」
「おはようございます、十代目!」

「おはよ、獄寺君?」
「…けっ」
「挨拶してよ!」




その原因というのがこの女だ。



「ねえ獄寺君、今日私が英語の訳当たる番
なんだけど教えてくれない?」

「…なんでてめーに教えなきゃなんねんだよ。」



十代目と一緒に歩いてたその女の名前は
氷之咲 紫騎。

俺が苦手なタイプの女だ。



すぐ大きな声出すしすぐ落ち込むし泣き出すし…
馬鹿みたいに楽しそうに笑う。


何がそんなに楽しいんだか。



「お願い!ちょっとでいいから。きちんとわかる範囲
で訳してるからチェックしてよ。私より成績いいでし
ょ?」


「駄目だ。俺は十代目に教えるので忙しいんだからな!」

「お、俺はいいよ獄寺君。氷之咲さんに教えてあげて?」


「……十代目がそう仰るなら…」


ああ、なんでこんな奴の手助けをしなきゃならねんだ。

俺は十代目をサポートしなきゃいけねえってのに。






「今日は山本君、学校休みだなんて珍しいよね」

二時間目の休み時間。


英語の訳が合っているか俺がわざわざチェックしてたら
氷之咲がそんなことを言いやがった。


「山本のことなんて別にいんだよ。放っておけ。」



イライラして答える。ちょっとだけ胸が痛いのは
…多分気のせいだ。



「でも心配でしょ?今日お見舞い行ったほうがいいかなぁ」


「勝手に一人で行ってろ!んでうつしてもらえ!
馬鹿同士風邪引いてろ!!」


別に思ってないのに口が勝手に余計なこと言ってら。
荒々しくノートを返した。



訳は全部合ってるみたいだ。


「はぁ!?わけがわからない…っとにも〜…獄寺君っ!」

怒った氷之咲は俺に何か投げてきた。
…ジュース??


「お礼。すぐにカリカリするクセ直さないと嫌だからね!?」


そういって自分の席に着くあいつの後姿をぼんやり見る。

…嫌だからねって…そんなの知るかよ。



顔が赤いのは多分、俺が暑さにやられてるからだ。



最近、本当にお前といると調子が狂う。


―だから女って嫌いだ―








翌日。

十代目と氷之咲が一緒に登校していた。

またあの女十代目と一緒にいやがる…
十代目の右隣は俺だっての!


「おはよ、獄寺君。」
「…けっ」


いつものように俺が目を逸らしたらぐりっと
首がへんな方向に曲がった。




「挨拶っ!」

「馬鹿、放せ!」



どうやら無理やり俺の顔を氷之咲が自分の方へと
向けさせているようだった。



顔近ぇんだよ!!



「挨拶するまで離しません!」

「ああ?誰が挨拶してやるか!」

「お、落ち着いて2人共!」



「もしかしてずっと私の顔みていたい、とか?」

「なっ、誰が!………はよっ、ほら離せよ。」

「うん、お早う!」



満面の笑みを向けられてまたそっぽを向いた。
なんだよこいつ…何でそんなに嬉しそうなんだ。



最近、俺は十代目じゃなくてあいつのことばかり
考えてる…勿論、悪い意味でだけどな!


「あ、山本君!おはよー!」

その時曲がり角からあの野球馬鹿が歩いてきやがった。


…また最悪が一人増えたぜ。



ていうかなんだあの氷之咲の嬉しそうな顔。
なんかムカツク。



「お、はよー。昨日はありがとな!」
「えっ、ううん。良くなって安心したよ。」

「ああ、来てくれて嬉しかったぜ?」
「そんな…」



嬉しそうな顔してやりとりしてる馬鹿2人。

昨日見舞いにでも行ったんだろう。


…やってらんねー。


「十代目!あんなやつら放っておいていきましょう!」


「え、でも…」
「放っておいたらいいんすよ!」



「あ、ちょっと待ってよ!」
「おいてけぼりはナシで頼むぜ!」

「知るか!!」



なんなんだよ…仲良くしてーなら勝手に2人で
どっかいけばいいのに。




「そうだ。今日数学3限目にあるでしょ?
次の休み時間に教えてほしいん」


「お前何個苦手があるんだよ。」


「…苦手なのは数学と英語。教えてくれない?」

「無理。俺忙しいんだよ。」



十代目と大事なお話があるからな。

そういってみると氷之咲は目線を足元に移動した。



「…そ、っか。わかった…ごめんね。」


わかりゃいいんだよ。そう言って俺は席を立つ。




そうだ。俺の優先順位はなんといっても十代目。
十代目が一番であとはどうだっていい。

…そう思ってたんだ。



けど今…なんでか本当にわからねーけど


(あいつのあんな顔、初めてみた…)

氷之咲のことが気になって仕方ない。



「ねえ獄寺君。話って何かな?」
「それは、その…」

「どうしたの?」



「いえ、お話するつもりだったんですが…
判りやすいようにと作った書類の方を家に
置いてきちまって…口で喋ってもいいですか?」




「…獄寺君。実は氷之咲さんのことが気になってたんじゃないの?」



「ほぅええ!?なな何言ってんすか十代目!」


「(ほぅええって言ったよこの人)違うの?」



言われてぐっと答えに詰まった。

十代目は何でもお見通しだ…


「それは……スミマセン十代目!本来なら十代目を
一番に考えて行動しないといけないはずなのに昨日はその…

氷之咲が山本のところに見舞いにいったかどうか
そればっかりぐるぐる頭に回ってまして…」



「氷之咲さんが好きなんだね?」


「ぇえええええ!?ななななんあなあなな
何言ってるんですか!

俺があんな女すす好きだなんてそんな―」



「あはは、照れなくていいよ。氷之咲さんは可愛いし
優しいし強い子だよね。好きになったの俺分かるよ。」


うう、十代目にフォローされるだなんて…情けねえ。



「う、その…本当に好きとかじゃ…ただあいつのこと
目に追っちまうとか山本の馬鹿と楽しそうに笑ってる
とすげームカツクというか…」



「それが好きってことでしょ?」

「…え…そうなんす、か?」

「うん。(無自覚だったの!?)」




これが…好きってことなのか…?

よく分からない感情だが…



「今お昼休みだしもうすぐ山本と氷之咲さんがくるよ?
自分の気持ち、伝えた方がいいんじゃないかな?」


「そっ、そんな!俺の優先順位の一位は十代目です!
女のこととかそんなのは別に後回しで―」




「や、山本君恥ずかしいってば…」

「そうか?いいじゃんか。
今度から紫騎って呼ばせてくれよ?」



その時俺の目に飛び込んできたのは野球馬鹿と
照れたように笑う氷之咲。



山本の手があいつの頭を撫でてた…


頭が一瞬真っ白になって無意識の内に俺は



「こいつに気安く触んな!!」



氷之咲を抱き寄せてそんなことを山本に叫んでた。



「ごっ、獄寺…君?」


声からでも容易に感じられた彼女の驚いた表情。


俺はしてしまったことの重大さにはっとして慌てて手を離した。



何してんだよ俺は!!!!



「…っ、ちょっと購買いってきます十代目!」



誰の顔もみることができなくてそのまま屋上を飛び出す。

全速力で走った。





なんでだ。俺は馬鹿か。



さっき十代目に優先順位の一番は貴方ですと伝えた
はずなのに…


最近ずっと…それこそどうかしたのかって思うくらい


一番に考えてしまうのは氷之咲のことなんだ。




「待って獄寺く―あっ」
「!?」
「いったー」


後ろからの声にはっとして振り向いたら氷之咲が座り込んでた。

…どうやらつまずいてしまったらしい。




「何やってんだよ。」

俺は彼女の側まで歩み寄った。



「…何で逃げるのよ。」
「に、逃げてねーよ。…怪我してねーかよ。」



視線を逸らしてそう訊ねる。



「…してないよ。ちょっと擦り剥いただけ。
それよりさっきのことだけど…」


「な、んだよ。」



「獄寺君って私のこと…好きだったの?」
「なっ」



なんて直球投げんだよこいつ!野球馬鹿かお前は!!



「…ッお前に関係ねーだろ。」

「めっちゃあるでしょ!!」



「……気になんのか。」

「なるよ。…あんな風に言われたら私のこと好きかなって
……思っちゃうでしょ?どうなの?」


「うっ」



だからなんでそう直球に訊いてくんだよ…恥ずかしいだろうが。



「ああ好きだよ。…氷之咲が好きだ。」


「え…本、当?」


「嘘つくかばーか!」


「なっ、毎回毎回馬鹿馬鹿言わないでよ!

私こうみえても成績は獄寺君の次にいいんだからね!?」



「はっ?じゃあなんで毎回俺の所に色々訳教えろとか
言ってくんだよ。」



俺の次に成績いいなら訊く必要全くねーんじゃねーか??



「……鈍いよね獄寺君は…」

「はあ!?誰が―」



「私も獄寺君がずっと好きでした!」


はっ?


「好きだから…ファンクラブの子たちがちょっと怖いけど
毎回訊きにきてたの!…わ言っちゃった…恥ずかし」




え、マジで言ってんのかこいつ。
だってお前


「山本のこと好きなんじゃねーのか?」

「はい?何でここで山本君?」


「いつも仲よさそうにひっついてたじゃねーか!
見舞いにも行ってたしよ!」



「そりゃ怪我したり体調悪くなったら心配でしょ?
それにひっついてたって…誤解だよ。私が…

獄寺君のことが好きだってこと山本君に
ばればれだったみたいだから相談してたの。」



「相談!?!」




俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。


あの馬鹿に相談してたって!?




「何俺の居ないところで相談してんだよ!!

恥ずかしいことすんな!」



「なっ、そっちだってさっき屋上で私のこと
抱き寄せ…っよせ…」



氷之咲が先ほどのことを思い出したのか
恥ずかしそうに顔を赤らめた。



「口籠ってんなよ…」



俺自身も彼女の顔をみて赤くなる。



あーもう!


「…帰るぞ。」

「へっ!?帰るって」

「授業なんてやってられっか!!」


きっと帰ったら山本の馬鹿と十代目に色々訊かれるだろう。


いや、十代目には一応顛末を話しておかないと
いけないのかもしれないが…



今は駄目だ。恥ずかしすぎる!!



「ちょ、獄寺君っ…このままで帰るの?」

「なあっ!だだ誰が!!」



思わずも手首を掴んでいた手をぱっと放す。


あー駄目だ俺…こいつといたら完全に調子が狂うぜ本当。


「…ちょっと手繋ぎたかったな…なんて…あ、顔赤い。」


「うるせー!」




本当に認めたくないけど俺は…
俺の思ってる以上にこいつのことが好きみたいだ。


「ねえ獄寺君。…これからはもっと一緒にいようね?」

「…っ」



そんなのこっちから願ってやる。

なんて言えずにその代わり手をぎゅっと握り締めた。



いけないことだとは思っていても、頭で
思っているのに理屈じゃできない優先順位。


その一番は氷之咲…らしい。



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