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サクラサク、四月 2 ―雲雀連載夢2。雲雀さんに認めて貰おうとする筈が…大失敗?
風紀委員になった翌日。

「何してるの君。5分も遅刻だよ。」


私はだらだらと汗を流していた。
1秒でも早く学校に着こうと走ったのが原因である汗と、雲雀さんの綺麗だけれど
鬼のような眼がこちらを射殺そうとしている故の大量の冷や汗。

せっかく雲雀さんの役に立とうと思ったのに最初からつまずいて怒らせてしまった。

…昨日雲雀さんの為に何ができるのかと考えていて結局殆ど眠れなかったのが原因

といえば聞こえはいいけど、その働きによって雲雀さんが褒めてくれたらな…えへへ。とか
妄想していた時間も長かったというのがあいたたたな所だ。


「本当にすみません…」
しゅん、自分で反省した。
これで風紀を辞めてとか言われたらどうしよう…


「氷之咲 紫騎。」
「へっ?は、はい!」

名前呼ばれちゃった、やった!
不埒なことを考えながら返事すると


「罰を与えるから。」

とんでもないことを言われました…いっそ風紀を辞めてと言われた方がよかった…?



「何をしたらいいでしょうか?」

その問いにはあまり悩まずに雲雀さんはこう言った。


「そうだね…最近校舎が汚れてきたから――全校舎の掃除をして貰う。」


ワット?


「え…全校舎って…教室とかトイレとか更衣室とか…全てですか?」
「他にどう受け止めてるの?」
「いえ…」
「全部と言ったら全部だよ。」


全部かあ…大変だ。


「分かりました!今からしてきます。」
「放課後だよ。」
「放課後、ですか…?」

「君が遅刻してきたのが原因だからね。それは放課後して貰う。
まだまだ風紀の仕事はたまってるんだから今はその書類整理から始めてよ。」
「は、はい!」
「あとコーヒー。」
「はいっ!」


さっそくのご注文に急いでコーヒーを淹れて書類整理にかかる。

(どうしよ、放課後帰るの遅くなっちゃうな…)

友達とは帰れそうにない。…自業自得なんだけれどね。





そうしてやってきました。放課後。

モップよし、雑巾よし、洗剤よし。バケツに水もちゃんと入ってる。

「よーっっし、やりますか!!」

自分で自分のやる気を奮い立たせようと思い切りお腹に力を入れて叫んだ。
…廊下歩いてる人がぎょっとしてこっち見たけど気にしてなんかいられない。


(何せ相手はこの校舎さんだからね!大きい敵だ!)

今度こそ、雲雀さんをがっかりさせないようにしなくちゃ!


「はぁー、はぁー。」

息を吹きかけて窓を拭いていく。…きちんと脚立も持ってきてるので
上の窓もきっちり磨く。…その為の体育着も装備している。

(スカートだと下見えるからね〜さすが私〜)

心中で自作の歌を歌いながら窓拭きに専念する。
こういう作業、結構嫌いじゃないかな。

洗剤をぴゅっと掛けて隅の汚れも取る…こうやってみると結構汚れてますな。


「ふっんふっふ〜♪」

いつの間にか声に出して鼻歌を歌っている私。…こうでもしないと
一人作業ってちょっと寂しい時あるからね。

…これ、どれくらいでできるのかな…今日中に終わらせろとか言われたら
泊まらないと駄目だよね…?

夜の学校って楽しそうだけど怖そう…!!

(一人だったら耐えられないよ!)
と、とりあえず早く綺麗にできるだけ早く(2回早くって言っちゃった)
作業終わらせないと!






(さて、どこまで進んでるかな…サボってたりしたら咬み殺さないとね)

時刻は19時。
部活している連中も各部によっては家に帰宅する時間だ。


彼女がどこまで作業を進めているか、それを巡回ついでに確認しにきた。
校舎の一階からするよう指示したから今頃は3、4階くらいだろうか。


「ふっんふっんふ〜ん♪お腹空〜いったっな〜♪」

4階にいくとわけの分からない歌を歌いながら脚立に乗っている女子を発見する。
よく見れば体操着を着ている。

(何この風景)

「あっ、雲雀さん!?」

僕を見つけた君はちょっと恥ずかしそうに脚立から降りた。


「あの、まだここまでしかしてなくって…とりあえず窓拭きをしようと教室以外の
使われていない部屋と廊下の窓拭いてるんですけど…」

僕より少しだけ背の低い彼女がおずおず僕を見て現状を報告した。


「…遅いよ。」
「すみませんっ!」

言い訳したらどうしようかと思ったけど素直に謝ってきたのでそれ以上は
文句をいわないことにしておく。

「…まあいいや。今日はこれで終わりだから帰っていいよ。」
「へっ、…じゃあ泊まってでも全部しないといけないってことはないんですか?」
「したいの?」
「いえ、帰りたいです!」

良かったとほっと胸をなでおろす彼女。

「下校時刻だから早く帰ってよ。」
「はい、わかりました!あの…」
「何?」

言いにくそうにしていたので先を促すと

「一緒に帰りませんか…?」


予想外な言葉をかけられた。…君と一緒に?


「咬み殺して欲しいならいいよ。」
「や、やっぱりいいです、さようならっ」

慌てて背を向けて脚立を片付け始める彼女。
…僕と一緒に帰るだなんてよくそんな発想が出てくるものだ。

(…バイク乗りたいから??)


よく分からないけれどとりあえず他の階も見回りに行くことにする。



…今日彼女についてわかったことは…変な子、ということくらいかな。
それから…きちんとサボらずに3時間作業してた…真面目な子。

今日の遅刻は今回の態度に免じて、全階の窓拭きだけで終わりにしてあげようかな。
(また遅刻したら追加するけど)





(はぁー…やっぱり駄目だった)

帰り道を一緒に帰れたらいいななんておこがましいことを考えていた私は
雲雀さんにすっぱり断られてがっかり。


そうだよね…私なんかじゃ雲雀さんとは釣り合わない。
でも…もっとお話してみたかったな。


(先は長いな〜)

雲雀さんに認めてもらう計画が叶うのはまだまだ先みたい。
でも


(今日は呼びに来てくれた♪)

彼にとっては業務みたいなことだったとしても、私を探して呼びに来てくれたんだと
思うととっても嬉しかった。

私って単純?…別にいいよね。


明日も頑張ろう!


続く。


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