君が誰かを好きだろうと、僕は君が好き/水栄
屋上で昼飯食べたあと、自殺ができるかどうかやりたくなって。
空がきれいにはえる柵の外へ身を出してみた。
そしたら、さっきまで一緒に弁当を食べていた水谷が近くにやってきた。
「好きだよ大好き!キスしていい?」
「・・・バカ、今から飛び降りようとしてるんだけど?見てわかんない?」
ニコニコと笑ってるあいつ。
風がざわざわとふいて髪が揺れる。
(この気持ちを忘れたいのに)
「だって好きなんだもーん。抑えきれないんだよー。手繋いでいい?」
「触るな、とめるな」
(中学の時からずっとずっと好きで)
「えー、ケチー。ちょっとくらいいいじゃん。じゃあほっぺたプニーってしてもいい?」
柵から手を伸ばしてほっぺを触りにこようと少し身を乗り出してきて。
けどそっとその手を押し返した。
水谷は俺に触っちゃいけないんだ・・・
俺は・・・
(俺は三橋にはかなわない)
「水谷死んで」
「うん、栄口と一緒なら死ねる。今からどう?」
なにを言われてるかわかってる?
なんでなんで
死ねとまで言われた相手に笑顔を見せる?
「一緒に死にたくない。それに俺、お前と話したくない。」
ああ、だめだ
水谷・・・近づかないで
「そう?俺はしゃべってたいよ。」
(阿部、俺はなんだったの?)
柵から手を出してギュッと俺の体を抱きしめた。
あったかくて心地よい香り。
水谷の匂いだ。
シャンプーかなにか水谷の特徴的な匂いが俺を包みこむ。
(水谷は知ってるのかな)
「俺の目の前から消えて。」
「うん、キスしてくれたら消えてもいいよ。」
さっきよりも強く抱きしめられ、心があったかくなって。
水谷のふわふわとした髪の毛が首にあたった。
(なんでだろう・・・心が安らぐ)
「卑怯・・・。そんなこと言われたら死ねないじゃん。水谷はずるいよ・・・」
「ううん、違うよ。俺は自分の思ったことを言っただけだよ」
にっこり笑った顔との距離は15センチ。
「阿部じゃなくて俺を見てね。俺は絶対、栄口に寂しい思いはさせないよ。」
にっこり笑いながらいい。
俺は、知ってたことにびっくりしたが・・・
「ばか・・・」
涙がでて、手でふこうと伸ばしたら水谷に舐められ。
にっこり笑いあった。
君が誰かを好きだろうと、僕は君が好き
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