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大学生と高校生 3


プルルルルル


急いで電車に乗り込んだ。
一気に溜まった息を吐き出す。
今日あった事は全て榛名が仕組んだことだったのだろうか・・・
否、それは考えすぎだろう。



まだ一人暮らしを初めた部屋は教えていない。
というより、一人暮らしをしてること自体言っていない。
けれど、今日話した内容や流れで気づいているはずだ。

直接的には聞かれてない。
他のメンバーに聞いて、そうなんすか?と加具山に確認をとられただけ。
ただ、それだけ。
答えないわけにもいかず、ああそうだな、と流した。



駅に着き、改札口を通り抜けそこからマンションまで5分ほど歩く。
途中、後ろを何回か振り返った。





――よしっ誰もいない





マンションに着きガチャとドアを開けると、後ろから誰かにドンッと押された。
そのまま真っ直ぐ前へ、玄関に倒れ込む。
受け身をとるが、玄関マットが滑る。
倒れている間に、ドアの鍵をかけられた音がした。
急いで立ち上がろうとするが、先程の衝撃で腰が痛み思わず声がでる。




「大丈夫っすか?」






――ああ 榛名か




少しずつ近づいてくる榛名に、座り込んだ状態のまま後ろに下がる。






――腰が痛い






ずるずると引きずりつつゆっくりと逃げる。
彼もまた追い付けるはずなのに、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。
そして廊下の壁にあたった。
彼は表情一つ変えずに座り込み、加具山の手をとりキスをおとす。
ただぶるぶる震えていた。
そのまま壁に手を押し付けられ、顔を近づけわずかに数センチでとまった。
目の前には榛名の整った顔。


「なんで会ってくれないんっすか?俺、不安で不安で・・・だから勝手に来ました。俺のこと嫌いになったすか・・・?」


先程までの雰囲気と違い泣き出しそうな表情。苦し気な声。


「メールじゃわからないんっすよ、毎回俺からだし返事くれないこと多いし・・・。こんなにも好きなのに会えないって耐えられないっす」


ゆっくりと唇に温かくて柔らかいものが触れる。
びくっとして逃げ出そうと顔を反らすが、握られた手は離されずにもう一度口づけをされ息ができなくなる。思わず目をつぶり、また二三度唇が触れた感覚。解放されたあと呼吸が乱れた。


1年振りにしたキスは荒々しく、涙の味がした。
お互いに泣いていたから。



――会うことを拒めばいつか榛名は俺のことなんかすぐに諦めてくれるだろうと思った…
だから俺からあまりメールを送らなかった。
いつか、いつか俺を忘れて別の誰かを見つけるだろう。
それなのに、毎日のようにメールがきた。

「だめなんだ・・・」


「俺なんかがお前みたいにすごいやつと付き合ったら・・・お前にはお前にふさわしい子がいるんだよ!」


「――なんでいつも俺から逃げるんっすか?
カグさんのこと好きって何度言っても信用してくれないじゃないっすか!
俺はあんたじゃないと嫌なんっすよ。
こんなにも好きなのに!」



榛名は加具山を抱き締め顔を服にうずめながら話した。
泣いているのだろう。
加具山もまたはらりはらりと涙を溢しながら榛名の方を向かずに話す。
お互いに好きだった。
でもメールや電話だけじゃ伝わらないことがある。


榛名は顔を上げ、加具山の顔をみる。
お互いに涙で目が赤い。


「―――今日はもうこの辺で帰ります。また来るんでその時は逃げないで下さい。俺の気持ちはそんな逃げられる程度のもんじゃないっすから」


ふっと手を離され、自由になる。
榛名は立ち上がり、玄関に向かう。
なにか―――

なにかをいうべきなのだろうか。





「榛名!」




何も考えず名前を呼ぶ。
こちらを向き小さく笑った。







そのままバタンと閉まったドア。
静まりかえった部屋に一人泣いてうずくまる。




――榛名






→4へ続きます



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あきゅろす。
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