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大学生と高校生 1


高校を卒業し半年が経った。
いまでも榛名と連絡は取っている。
でも直接は会わない。
会えないのではなく“会わない”
何度か会おうと誘われたが、全部断った。
理由は大学、バイトが忙しいで通した。
そんな状態が続くなか、今度野球部の卒業生で集まろうというメールがきた。
勿論、加具山と同級生が集まるだけなので後輩である榛名は来ない。



同窓会当日を迎えた。
半年ぶりなのに懐かしい。
あの頃より髪が伸び、茶色に染めた奴もいた。
話してみると中身は変わっておらず、彼女が新たにできた話しもない。


注文した鍋を食べながら、大学生活やバイトの話で盛り上がる。
高校時代の思い出も話したり、あの時カグヤンが失敗してさ〜などでみんな一斉に笑う。
共に三年間練習してきた仲間。
離れた半年は、まだ短い。


だんだんと後輩たちの野球について話になってきた。
どこまで勝てそうなど様々。
榛名がいるからベスト8まではいけるんじゃないかとか
甲子園いくだろ?
やみんな意見がばらばらで面白い。

そうしてまた、榛名がどうした、榛名がこの前そういや、など榛名の話になる。

卒業してからも、高校に行ってきた奴がいたらしい。
榛名の話しを初めた。

「そういや、先輩たちは同窓会とかしないっすかって聞かれたんだよな」

ああ、俺も俺も。
メンバーが次々と答えていく。
同時にもわもわと不安がわいてきた。

「もしかしたら今日来るんじゃないか?俺、日にちと場所言ったし」

メンバーの誰かが言った。
おおっ!いいじゃん!などとまた誰かが言った。




――このままだと彼がきてしまう





「俺、かえ「お久しぶりス!」」










―――ああ きてしまった





笑顔で立っていた。
半年ぶりに再会した彼。
先程まで話されていた人物。


加具山は思わず目を丸くした。
しかしすぐに目をそらし、コップを手にとり水を飲む。


――気付かないふり


彼が此方を見ているけれど。
誰も二人の間に何があったかなんてしらない。
ただ、会っていないだけ。
ただ、会えていないだけ。



(――逃げてるのか、俺?)




チームの誰かが椅子を持ってきて、加具山の隣に置いた。
気を利かせたのであろう。



今でも連絡を取ってるんスけど、なかなか会えないんスよ。ね?カグさん?
挨拶したあと、みんなの前で聞いてきたのだから。
その場は適当に忙しくてごめんな、と流した。


隣に座った彼は他のメンバーと話しをしている。
今年の一年生はどうだなど、榛名は質問攻め。
その間、加具山は榛名の方向を見ないようにうつ向いていた。

突然、手や脚に何かが触れてきた。
撫でられる感覚にぞわっとしそこを見ると、榛名が向こうを向いたまま加具山に触れてきていた。
脚は榛名の脚に絡めとられ、立つに立てない状態。
他のメンバーに榛名との昔の関係がバレたくない想いから、言いだせない。
優しく手や太ももを撫でられる。
その度に身体がぞわぞわっとした。榛名はゆっくりと手を滑らせる。触られた部分が熱い。

昔のことを思い出し、顔や身体全体も熱くなる。
榛名がそんなことを知ってか知らずか、こっそりと加具山の耳元へ低い声で呟いた。




――逃がさないスから






榛名が来てから時間はゆっくり流れるように感じた。
いつの間にかぎゅっと左手を握られた。
一瞬、加具山は固まった。
後ろに壁がある為、誰かに見られることはほとんどない。
しかし公共の場で手を繋いでいる状態。
離れようと少し左手を動かすが、力強く握られた手は離れない。
メンバーもいるため、右手を使って外すわけにもいかない。
話をぎこちない笑顔で聞き、内容も頭に入ってこなかった。







――榛名、榛名、榛名、榛名







→2へ続きます


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あきゅろす。
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