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ある日のお昼休み/浜泉





青い空に白い雲がくっきりとはえている夏の午後。ぼーっと雲を見つめてるだけで授業は終わり、今から昼メシ。たった一つの楽しみの弁当を四人で囲み、これが終われば放課後の練習まで寝るのが日課。
ただ、今日は浜田がいない。どうやらさっき先生に呼び出されたらしい。
(毎日一緒に食べてると、いないのが不思議だよな)


何かぽっかりと穴があいたようなそんな気が。昨日、田島がいないときはこんな気分にはならなかったのに。
(寂しい…?浜田がいないのが?)

もやもやした想いから逃げようと、弁当に集中する。
(えーっと、まずはウインナー食べて…)
箸でつかみ口の中に放り込む。
すると感じた視線
その先を見ると、何か考えごとをしてるのか難しい表情の田島
一瞬目があったけど、こっちが見てることに気づいてないみたいで
手元を見ると、まだ手付かずの弁当
(あり得ない!食べずに考えごと…!?)


「はあ、どうしよう」


1人考えてる俺をよそに、彼はつぶやいた。普段なら急いで食べてるはずの手は、顎の下。


「どうしたよ」


田島は頬を膨らませ、少し弁当を見つめてる。まだ、箸をもとうともしない。すると教室どこかから笑い声がした。そしてなにか彼の中で、区切りがついたらしく、はっきりとした目でこっちを見た。


「最近、花井が一緒に帰ってくれねえんだ」


うつむいて、普段にはない笑顔のない暗い表情。隣にいた三橋も卵焼きを食べるのをやめて、心配そうに田島を見つめてる。
 (…えと、話ってそれだけ?正直いってどうでもいい…)





(でも……もし浜田が…)





急にここにいない奴を思い出した自分に驚いた。
(なんでこのタイミングで彼奴なんだ…!おかしいだろ!俺、なに考えてんだ!?)



三橋には何か通じるものがあるらしく先ほどからずっと田島を見つめている。
(俺にはわからない想いだけど、コイツらを悩ましてる奴は今頃、何してるんだろうな)

「花井も、幸せだな」


いきなりのことに目の前の君はびっくりしたような顔をした。口がポカンと開いている。三橋もひよこ口になって。



『なんで?』



二人同時に揃えて声を出す。俺たちの周りだけ静かなような気がした。
(気付かないほど好きなんだなー)


あとまだ、わかってない2人にもうひとつ。



「田島は花井のこと大好きだろ?」


言うのも恥ずかしい言葉。でも、否定をしない彼らにあこがれる。多分、恋をすればこれが当たり前かもしれないけど。だからこそ、さっきの田島の気持ちが未だにわからなかいのかもしれない。俺だけ違うから。阿部と三橋、花井と田島。
(憧れる…?いや、そんなハズはない。だって俺はそんな人いないから)


「でもそしたら浜田さんも、幸せだと思う」


いきなり田島があいつの名前を出したから心臓がドキッと痛んだ。そこから体の外へ熱が出てる気がして、とても暑い。相変わらず教室は静かなままで、いつもの騒がしさが聞こえてこない。


「だって、泉はなんだかんだ言って、浜田のこと好きじゃん」



まるで当たり前のことを子供に教えるような顔をして話す先ほどまで悩んでた奴。隣でかすかに頷く気配もした。


「んなわけねえだろうが 」

(俺が浜田を好きだなんてあり得ない)
声が少しうわずったせいか、2人は顔を見合わせてニヤッと笑ってこっちを見る。
これは、長く続きそうな気配。

(なんでこんなことになったんだろ……田島の話、流せばよかった)


休憩が終わるまで後り10分
話しから逃げきるのと、浜田が帰ってくるのどっちが早い?



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