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榛名誕生日にて



榛名サイド
誕生日は家族もしくは、好きな子に祝って欲しい。それは世界中の誰もが考える願望と俺は今、思う。必ずしもじゃないことはわかっている。けど俺は祝って欲しい。去年は一週間前からずっと誕生日アピールをし続けた。毎日、朝練で会ったときにいつ誕生日であと何日かずっと。そのかいあって当日の朝、俺が誕生日について言う前におめでとうとガム一つをくれた。キシリトールガムで一番俺が気に入っている緑のパッケージで他のより少し高いやつ。


そして、今日俺の誕生日


今年は去年とは違って、前日にも明日が誕生日であることを告げなかった。昨日の帰り道途中まで一緒に帰ったけどそういう話題は出なかったし、今年は言いたくなかった。彼に気付いてほしい。俺の存在がどこまで彼の中にあるのだろうか。もし今日なにもなかったら俺は昨日の俺を恨むだろうか。いやその時はその時で帰り道にでも自分から言おう。少しさびしい気もするけれど。


加具山サイド
この一週間、榛名からメールがこない。それまで毎日送ってきたから余計に目立つ。去年はしつこく誕生日アピールをしてきたのに今年はどうだろうか。反対に誕生日が近づくたびに沈んでいる気がするのは気のせいだろうか。このまま明日、榛名に会って俺は笑顔で誕生日おめでとうって言える?答えはわからない。それにもしかして、誰か好きな女の子ができたのかもしれない。どうせ俺なんかより可愛い子がいいにきまっているし、榛名にはお似合いだ。あのとき、好きだと俺に告げてきた言葉はなんだったのだろう・・・。気まぐれ?



プルルルル・・・

プルルルル・・・





「・・・もしもし、榛名?」
「加具山さん!?どうしたんっすか」
「今日、榛名誕生日だろ?だから電話しようと思って」
「加具山さん!俺うれしいっす」
「誕生日おめでとう、榛名」
「電話かかってくるとか思わなくて!」
「榛名、今何時?」
「12時25分っすけど、それがどうかしたんっすか?」
「・・・・邪魔しなかったか?」
「・・・まさかまた、加具山さん勘違いしてないっすよね?」
「・・・・・・」
「俺が他の女と電話すると思って時間ずらした、とか」
電話に出たときのあの嬉しそうな声はもうなくて、今はただ冷たいような低い音。榛名の機嫌を損ねたのだと思う。どこが悪かった?俺が何を?

「加具山さん、俺はあなたのことが好きです」
「違う」
「何がですか?俺の気持ちの何が違うんっすか?」
「榛名はもっと俺じゃなくて別の人が似合うから!俺は!俺は・・・」
「・・・言いたいことはそれだけっすか?要は俺にあんたが相応しくないって言いたいんっすよね?」
「ああ・・・」
「ちょっと外で会いませんか?」

あれから、すぐに着替えて外へ出る。殴られる覚悟はないが、殴られても仕方ないでろうと思う。俺はまた榛名を怒らせたに違いないから。待ち合わせ場所は俺の家の前。榛名はもうすぐそこまで来ているらしい。



プルルルルル・・・



「もしもし?加具山さん?」
「俺だけど、もうすぐ付きそうか?」
「後5分くらいっすけど」

外は真っ暗で、星がキラキラと光っている。久しぶりに星をゆっくりと見られた。野球の帰りはヘトヘトで空を眺める余裕なんてなく帰って寝ることだけを考えていた。今はそれよりも明るい電灯が俺を照らしている。

「さっきの話なんっすけど、加具山さんのこと俺はあきらめたりしないっすから」

榛名の息遣いと靴の音がテンポよく聞こえる。走っているせいか少し息が荒い気がする。

「だから、加具山さんから俺を捨てないでください」

ぎゅっと何かに抱きしめられた。

「加具山さん・・・」

それは先ほどまで電話からの声と同じ主。左側の耳に、生温かい空気がくすぐったくて、全身が少し震えた。

「は、榛名?」

名前を呼ぶとより一層きつく抱きしめられ、腰にまわされていた手がすーっと上に上がり、携帯を持った俺の手をとり、軽くキスをした。急いで手を振り払い、後ろを向いて目を合わす。それでも彼のほうが力が強くもう片方の手がまだ腰にまかれている。この際そんなことはどうでもいい。

「こんなこと・・・!好きな子にしてやれよ!」
「だからあんただって言ってんすよ!」
「なんで!」

恥ずかしくなって下を向く。榛名は俺が?好き?

「加具山さんは?俺のことどう思ってるんっすか?」

じっと彼に見つめられれば、答えなんて言うまでもなく分かってる。わかった君に最高の誕生日プレゼントを渡そう。






「好きだよ。榛名、誕生日おめでとう」


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