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目を逸らされるのは照れてるからじゃないって気づこうね 


「秋丸聞け」

「はあ?」

勢いよく教室のドアを開け入ってきたのは、面倒なやつ。
どかっと俺の前にある椅子に座りこっちを見る。
ていうかお前違うクラスだろうが・・・あまりにも堂々と入って来ているせいか、それとも頻繁に来るせいか分からないが違和感が全くない。
とりあえず榛名が入ってくることによって、騒ぎ出す女どもや、こちらに興味の視線を送りつつも近づこうとしないクラスメイトのことを考えると気が重い。
後で何を話したかと聞かれれば、野球部連絡で逃れている。
(にしても、限度ってものあるよな・・・)

当の本人は目の前で弁当を出しはじめ、どうやらここで食べながら話すつもりらしい。
ため息をこらえつつ、俺も弁当を出す。
食べ始めるのかと思いきや、ニヤニヤした表情でこちらを見てくる。

「さっきさ、誰に会ったと思う?」
「・・・加具山先輩」
「正解!秋丸すげえ!!」
「・・・いつものことだろ」

顔に書いてある。
だから早くそのだらしない表情をこっちに見せてくることをやめてほしい。
だいたいそれ、お前のファンが見たら泣くだろう。榛名のファンなんてほんとはどうでもいいが一応このクラスにも居そうなので注意したい。
なにせみんなが惚れている榛名はすかした野郎で、今とは全く正反対。
これで榛名のファンがいなくなるのなら大万歳だが、そんなことはない。
奴をカッコいいと崇めてやまない女子達に原因を問い詰められ後で困るのは俺である。
この状態をどう説明しろというのだ。
“榛名が一つ上の先輩に恋しています。相手は男です。俺はいつもその恋愛相談受けています”
と言ってやりたい

「でさ、加具山さんがさー」
「榛名さー、空気って読める?」
「空気は空気だろ。本じゃねえ」
「・・・うん、そうじゃないけどね」

駄目だ、今のこいつに何を言っても無駄だ。
自分の世界に入り込んでいる榛名を無視しつつ次の授業を考えたいが堪える。
加具山先輩に関することだからだ。
確か今日は水曜日だから榛名が加具山さんに会ったのは購買だろう。
日頃から栄養に関してうるさい榛名は、普段めったなことがない限り購買に行くことはない。

「で、今日は偶然にも購買で会った」
「・・・・偶然なんだすごいな」

牛乳しか買ってきていない目の前の奴、パンが目的じゃないのはだれから見ても分かるだろう。
水曜は加具山さんが購買にパンを買いに来る、ここまでの“偶然”はないだろう。
しかも毎週、水曜の昼前の授業である体育の時間に体育館入口付近で待機しているのはもう確信犯としかいいようがない。
大体、これで何回“偶然”が続いていると思っているのだろうか。

「で、声かけてもこっち向いてくれなくて」
「聞こえてないんじゃない?」
「追いかけて、話しかけても目逸らして話してきて」
「・・・そうなんだ」
「これって思うんだけどさー」
「・・・うん」
「意識されている!?」

確実に、榛名の思っていることとは違った意味で意識されていると思う。
だって、この前相談されたもの。
榛名に恋されている、加具山さんに。





「秋丸!」

思い起こせば1ヶ月程前のこと。
移動教室からの教室へ戻ろうと鍵を閉めていると、後ろから聞き慣れた声がしたので振り向いた。俺に向かって手を振っていた。


(あ・・・・先輩 )


後ろを向き三人ほど一緒だった友達に手を振って、こちらへと近づいてきた。
野球部での連絡か何かだろうと考える。
先輩が目の前に来たが、話しだそうとはしない。
顔を見ると、気まずいようなそんな表情。

「なんですか・・・?」

加具山さんが、目の前に来てからすでに三分は時間が経っている。
このままでは次の授業時間にどちらも間に合わなくなる。
先輩には悪いが急ぐように視線を合わす。
俺と視線が合うと彼は慌てるように、うつむいていた顔をひきあげ頭を掻きながら目線を横にしながら口を開いた。

「ちょっと、最近榛名がやたら引っ付いてくるのだけれど、俺なんかした?」

(・・・榛名、気付かれている。)

「多分、なにもしてないと思います」

思っていたことを素直に伝える
あんたのせいじゃない


「うーん・・・俺もそんなに気になるってことはないのだけれどね・・・ほら、あいつ目つきがちょっと怖いからさ」

吊り目気味な彼を頭に思い描く。
わかるような、この言葉を榛名に伝えたらどうなるか気になるが言わない。
へこむとその日一日暴投が多くて、こちらに被害がこうむるだろうから。
それはいつか加具山さん本人が榛名にいうのを待つことにした。

「うーん、秋丸だったら何か分かると思ったのだけど、ごめんな!」

にかっと笑って、多分榛名の前で最近見せていないだろう表情。

「・・・いえ、こちらこそ(ごめんなさい!)」

先輩には失礼だが、ここまで鈍い人に気付かせてしまうのだから榛名はどこまで付きまとっているのか気になったが考えないようにする。
これ以上この件にはかかわりたくないのが本心だ。

(それに俺だって・・・)

急に先輩のことを考えると顔が熱くなったような感覚がして、あわてて顔をうつむける

「え!?秋丸大丈夫か!?耳赤いぞ!?」
「いえほんと大丈夫ですから!(それ以上先輩近づいてこないで)」

キーンコーン、カーンコーン

びくっと肩が震え、チャイムの音で助かったと知る

「チャイム鳴ったので教室戻ります」
「わかった、もしあれだったら保健室いけよ!じゃあまた放課後!」

心配そうな表情で手を振って、こちらに背を向け走り去っていく先輩


いつからだった…?

榛名が先か
俺が先か


・・・・・・・・・

1ヶ月も前のことなのに、こんなにも思い出せるものだろうか
と思われるくらいはっきりと
目の前にいる先輩の悩みの原因は、まだ色々悩んでいるようで

まーつまりは

「・・・意識はされているじゃない?」

それこそ榛名が求めている以外のいろんな意味を込めて。
もしかしたら、榛名のことをそのうち好きになってくれるかもしれないし。
鈍い人を気づかせるほどに追いかけているのだから、榛名のほうが勝ち目あるよなと思うけど・・・気持ち悪がられている時点で立ち位置は一緒だろう。
ただ、俺はずっとこのままだろうと思うけど。


でも、とりあえず榛名さ・・・




目を逸らされるのは照れてるからじゃないって気づこうね


目を剃らした時の彼の表情をよく見ろよ
照れてねえから
震えているよ

「確かに恋だった」よりお題お借りしました
ありがとうございます


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