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気づいてた、でも気づかないふりして


「んも・・・やっ!」

榛名の体がいきなりくっついてきて、あっという間に壁に押し付けられた。

(・・・まずい)

榛名の胸をぐいぐい手で押し、意地でも離そうとする。
でも榛名の手は壁につき圧倒的不利な状況だ。
その上、日頃から感じる力量の差。
逃げれるはずがない。
同じ男でこんなにも差があるなんて・・・。

「なに、逃げようとしてんっすか?」
「・・・くそっ」

逃げ切れなかったことや榛名に対する悪態を含めて吐き出した。
とりあえず抵抗はやめ、それ以上近づいてこないよう手で榛名の肩を抑えておく。

「・・・加具山さん」

肩においた手をギュッと握られ、チュッと音をたてキスをする。

「・・・っ」

慌てて手を離そうとするが、手を握られたまま壁に押し付けられた。
さっきよりも状況がまずい、抵抗できない。
さらに顔を近づけてきて、足も動かせない状況

「・・・やめろ」
「俺の顔、見てください」
「いや・・・」

顔を斜め下に向け、絶対に榛名の方を見ないようにする。
あいつはきっときっとー・・・

「加具山さん・・・見て」
「・・・無理」

榛名の顔なんか見たくもない。
きっとすがるような目で俺を見るから。
他の誰にも見せない俺だけの目を見せるから。

「・・・加具山さん!」
「・・・っ」

だいたい、いきなりキスを迫ってきて押し倒されかけたのだ。
榛名が怖くて、何がしたいのか全くわからない。

「さっきのことは謝ります」
「・・・」
「でも、もう付き合ってから2ヶ月たつんっすよね」

わかってる。
いつかはそうなるって。
榛名がそういうことをしたがってるんだって。
でも俺は・・・!
「加具山さん、俺はいつまでも待てる男じゃないっす」
「・・・」
「でも、今無理やりするつもりはありません」
「・・・うん」
「1ヶ月っす。1ヶ月待ちます。それまでに心の準備しておいて下さい」

にっこりと俺を見て話す。
ただ、気になったことを1つ。

「もし俺が・・・キスする気にならなかったら?」
「その時は無理やりっす。力ずくで。」
「は」
「大丈夫っす。その気にさせますから。」

自信ありげに胸をたたく榛名。
なにをどうして俺とキスなんだ。
そして俺をその気にさせるなんて!?
どっからその自信が!?
それと

「・・・榛名」
「なんっすか?」
「それ、どっちにしろ俺がお前とキスしなくちゃならなくね?」

気づいたこと

「・・・あー、そうっすね」
「榛名」

優しく今までの中でも最上級の笑顔で呼んでやる。

「はい!」

嬉しそうに答えたのもつかの間

「ぐぼっ!!!」

思いっきり殴られた。
頬はじんじんと響き、多分赤くなってる。

「お前、ふっざけんな!!」

榛名をたたき、フラフラになったときを狙いどつんと体当たりをしてドアまで走った。
叩いたほうの手がじんじんした。逃げて走った俺を追いかけてくると思ったがそんな様子がない。
だが、榛名に本気で追いかけられると捕まるので、荷物が置いてある部室まで一気に走りこむ。
なんで後輩相手にここまで走ってんだろ、俺。
自分で自分に問いかけるが答えはでない。
ただ今は走るしかない。

「加具山さん、絶対にその気にさせますから」

教室で1人ぼそっと呟き、外を見ると満天の星空。
叩かれた頬をさすりながら、走りさったときの加具山さんを思い出す。

(あのとき、顔赤かったよな・・・)

にんまり1人で笑い、急いで帰る用意を詰め込んでる加具山さんの元へ走り出す。
こっからが始まりなんだ!
俺と加具山さんの戦いが始まりだす。

気づいてた、でも気づかないふりして

1ヶ月後

(あのときの加具山さん可愛いかったな)
(うっせ)
(いいんっすか、そんなこと言って?)
(ふん)
(余裕ないんでしょ?)
(あるわけないだろバカ)

ゆっくりとゆっくりと目をつぶり、彼からのキスを待つ。





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あきゅろす。
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