黒子のバスケオールキャラ
帝高バスケ部レギュラーでケーキ作ろうぜ
三年生最後の試合が終わったその日、赤司が突然「うちへ来ないか」と5人を誘った。
特に断る理由も無かった為専属の車に乗せてもらい、赤司家にお邪魔することになった。
居間に案内されるなり、驚くものばかり。何メートル続くのかわからない廊下に高価そうな飾り物。下手に触って割ってしまえば数百万はしそうなものばかりであった。赤司は「ソファで座って待っていてくれ」と言って5分前にどこかへいってしまった。そわそわしながら黄瀬が周りを見渡す。
「赤司っちの家なんて来るのはじめてっすよー!みんなは来たことあるんすか?」
黄瀬が目を輝かせる。
「赤司んちははじめてだぜ。赤司の私生活とか謎だらけだよなあ」
青峰はどかっとソファにもたれた。
「おれも来んのはじめてー。ねー。んまい棒食っていい?」
「人様の家で菓子を食い散らかすものではないのだよ」
紫原は緑間の言葉には気にもかけず菓子袋を開けた。
「アレ?黒子っちはどこっスか?」
居間に案内された時は全員そろっていたはず。
「ほんとだー。さっきおれの横にすわってたのに。いつのまにいなくなったんだろ?」
ぼりぼりと食いながら隣にいたはずの席を見下ろす。
「テツならさっきトイレに行くっつって部屋出てったぜ?」
「こんな広いのにトイレの場所とかわかるんスかね」
―トントン
4人が一斉に音がしたドアを見た。
「待たせたね。さあ、今からみんなでショコラケーキを作ろう」
ドアから現れたのは赤司だった。その背後には人数分のエプロンをかかえた黒子がいた。
突然すぎる赤司の言葉と何の躊躇もなくエプロンを着ている黒子に周囲にいたものは唖然とした。家に来ないかといわれた時、何かゲームなどして遊ぶのかと思っていた他4人は開いた口が塞がらない。
シーンとする部屋で黒子がポツリと言った。
「トイレから戻る時に少し迷ってしまいました」
口元を笑いでひくひくさせた青峰が黒子の様子に突っ込んだ。
「お、おう。てかテツそのエプロン女物なんじゃ・・・」
「赤司くんに着るように言われました」
「あはははは!黒子っちかわいいっす!」
黄瀬はパシャパシャとスマホで撮影を始めた。
「撮らないでください。フラッシュ・・・まぶしいです」
「なんでケーキをこのメンツで作らねばならないのだよ・・・」
赤司は今後この6人で集まる機会はほとんどこないから思い出を作っておきたいとを皆に説明した。黄瀬と紫原は驚きはしたものの、黒子と赤司が着ているからということでしぶしぶ黒色の男物のエプロンを身につけた。残りは黒子が着ているあきらかに見た目が女物のエプロン。「ダイキ、シンタロウ、どうした。二人のエプロンも用意をしたぞ」
「・・・俺は菓子作りの経験は皆無だぞ」
眉に思いっきりシワを寄せて緑間は赤司を恨むようににらんだ。赤司はそんな眼光をものともしないで「はやくつけろ」と笑顔で命令した。エプロンなぞ着たくないと言いたかった。なぜならば残った緑間と青峰のエプロンは黒子よりも丁寧に刺繍されたレースが施されていたのだから。
「赤司、なぜこの生地を選んだのだよ」
「すまない緑間。身長の高いエプロンが少なかったんだ。もうこれしかない」
素直に謝られて緑間はグッと口から出そうな文句を飲み込むこととなった。
―ぜったい、ワザとなのだよ・・・!―
「おい、紫原。俺のエプロンと交換するのだよ」
クイ、と紫原のエプロンをひっぱる。
「えーやだよー。早いもん勝ちー」
観念した様子でエプロンを装着した緑間を見て青峰はため息をつきながらフリフリのエプロンを手に取った。
―はあ。仕方ねえ。赤司の早く着ろっていう目線も怖えーしな・・・―
青峰がもそもそと着る様子に満足した赤司は皆を連れてキッチンへと向かったのである。
4人はまた開いた口が塞がらない光景を目にすることになる。
なんと黒子がテキパキとケーキの下準備をし始めているのだ。
「黒ちんすごいねー。なんかできる人ってかんじ」
「ありがとうございます。赤司くんとは何度かお菓子作りをさせてもらってましたから。慣れました」
「え?!黒子っち、この家に何度も来た事があるスか?!」
「はい。いつもは自分のエプロンを持ってきているのですが・・・今日は突然でしたから」
そういって黒子は慣れた手つきでチョコクリームを混ぜ始めた。
「お菓子作りを極めようと思ったんだ。僕は万能でなければならないからね。ちょうどケーキショップのショーウィンドウでお菓子を眺めていたテツヤを見つけて誘ってみたのさ」
赤司も慣れた手つきでオーブンシートをハサミで切っていく。ノリノリな黒子と赤司の様子に、離れた場所で眺めているだけの緑間と青峰はちょっと引いていた。二人は菓子は女が作るものだという固定概念みたいなものがあった。
「おーい、そこの二人!ボーっとつっ立ってるだけじゃただの眼鏡と黒人っスよ!手伝ってくださいよっ。ここにレシピ用意してくれてあるんすから見たらできるっしょ」
「眼鏡だと・・・聞き捨てならないのだよ」
「見てすぐできるのはお前ぐらいなもんだよ、黄瀬。俺はこういうのは向かねえんだよ。ここで皿でも用意してんよ」
「もー。すぐそうやって面倒くさがるっスねー」
「うるせー。さつきみたいな事いうんじゃねえよ」
「いいんだリョウタ。ダイキのチョイスするテーブルセッティングを楽しみにしようじゃないか。シンタロウは外に咲いている花を摘んできてほしい。ショコラケーキと紅茶に合いそうな花を頼む。あそこに花瓶があるから使ってくれ。ハサミはこれを使うといい」
「花・・・?・・・わかった」
思いのほか皆が従順に動いてくれる。赤司が笑顔でハサミを渡した。
「赤司っち、青峰っちがわりばしテーブルに置き始めてるっス」
「・・・リョウタ、なんとかしてやってくれ」
「了解ッス」
「赤司くん、オーブンの余熱終わりました。あとは焼くだけです」
「ありがとうテツヤ」
「おれほとんどみてるだけだったねー」
「そんな事ありませんよ。紫原君は卵をわったり洗い物手伝ってくれたじゃないですか」
「そう?」
ほのぼのとした二人の横にある大きな窓からドンドンと音がした。緑間が花を持ってこちらを睨んでいる。
「あ、すみません。うっかりボク鍵をかけてしまいました。すぐあけますね」
庭から戻ってきた緑間が摘んできた花を花瓶に飾って赤司に見せる。
「薔薇か。いいね。しかし素手だとトゲがささっていた痛かったんじゃないか?」
「ふん。このラッキーアイテムのおかげで無傷なのだよ」
緑間がポケットからほこらしげに軍手を取り出した。
「今日は手ぶらで珍しいなーと思ってたら、ポケットに入れてたんだ、みどちん」
人事は尽くしたのだよ、と満足そうにつぶやいている。
「ふふ、なるほどね。さあ、あと数十分でケーキが焼ける、その間は遊ぼうじゃないか」
赤司が笑顔で両手を合わせてパン、とたたいた。
テーブルに突っ伏していた青峰がむくりと顔を上げた。
「おお!バスケしようぜ!」
「いや、きょうはカラオケをしよう。地下室に防音部屋があるんだ」
黒子を除いた誰もが驚いた。
「なんで黒子っちは微動だにしないんスよ?!」
「ボクはここでカラオケしたことありますから」
「俺がカラオケ誘ったら断るくせに!ひどいっス!」
「耳元で泣かないでください。耳が痛いです」
うわーんと黒子に抱つこうとする。黒子は出来る限り腕を伸ばして黄瀬の顔を押し返すように力をこめた。
「カラオケって苦手ー。ていうか黒ちん歌えるんだ」
本日何度目かのシワを眉に寄せた緑間が呟いた。
汗で濡れた拳をグッと握りつぶして言う。
「歌の経験も・・・っ皆無なのだよ・・・!」
青峰は完全にあきらめた顔をし、テーブルに頭をつけた。
その後成功したケーキを食べてからも、次の日が休みだからということでお泊りコースになったのだがそれはまた別のお話。
(終)
次回の更新は2015年4月24日。
やぱり内容はギャグ視点。
キセキの世代面白いですよね〜。
勝手にそれぞれ動いてくれるし.
勝手に物語が出来上がっていくのがたのしい!
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