ハニーキャット
1
大好きな絵本。
黒猫の王子様が自由に旅をして勇敢に戦って悪いヤツをやっつける。
そして遠くの国の白猫のお姫様と幸せになるストーリー。
大好きな日本でママとパパに読んでもらってた特別なお話。
小さい頃から、ずっと憧れていた黒猫の王子様。
「いつか会えるかな?」というとパパもママも笑っていた。
「王子様になるじゃなくて?」って言いながら。
ボクには王子様になるだなんて発想はなかったから「うん」とだけ返事をした。
そうすると再びママとパパは顔を見合わせ「おかしな子ね」と笑っていた。
ボクはおかしな子と言われたことにショックを受けて自然と口にする回数が減っていった。
だけど心の奥底では黒猫の王子様に出会えることを願ってる。
そう今現在も…
賑やかな声が響く教室。
窓際の一番後ろの席から外を眺める。
今日は暖かいな。日射しがポカポカで気持ちいい。
「…き……蜜樹!」
「なっ!なに?猫田くん」
ボーとしていたところに急に話しかけられ驚いてしまった。
しまった…日差しが暖かくてついぼんやりしてた。
「何じゃないよ次移動教室だから早く行かないと」
「えっ!?あ、ごめん」
慌てて机の中の教科書を探っているとコツッと頭に軽く衝撃を感じた。
なに?と思い振り向く。
「教科書ならココにあるよ ほら行こ」
教科書を手渡され促され立ち上がる。
いつの間に…いつも猫田くんは先回りしててスゴいな。
「ありがと…いつもごめん」
「謝んなって!俺は人の世話やくのは慣れっこだしな」
ニッと笑顔を向けられ「気にすんな」と言われている気がした。
ボクは5歳から15歳の間、パパの仕事の都合で故郷であるフィンランドで暮らしていた。
生まれて5年間は日本に居たとはいえ幼すぎて日本の習慣にルールやマナーといったモノはよく分からない。
年に一度は日本に残ったママに会いに行くのだけど長期休みの間だけだから覚えてもすぐ忘れちゃうから今は慣れるのにいっぱい、いっぱいだっりする。
そんなボクに優しく親切にしてくれているのが10年ぶりに日本に帰ってきて初めてできた友達の猫田くんだった。
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