天使のような君へ
さらさら、さらさら。
歩くたびに柔らかく揺れるそれに、目を奪われた。
「…臨也さん?」
「…正臣くん、こっち来て」
ぽんぽん、とソファをたたいてみせると微妙に嫌そうな顔をしながら、てとてとと可愛らしく駆け寄ってちょこんと座る。
訝しげな視線を不躾にぶつけてくる彼の頭を無理矢理膝の上に乗せると、ものすごい勢いで睨む。
その表情さえ愛おしく感じるのはきっと、末期だからなんだろう。
「………、」
「…」
髪に触れるとぴくん、と一瞬怯えたように身を強ばらせた。
さらさら、さらさら。
やっぱり柔らかで気持ち良い。
「…なにしたいんすか」
「別に?」
「……(イラッ)」
「(あ、)」
不機嫌になった。
むす、と唇を拗ねたように尖らせる仕草が可愛くて、つい笑みがこぼれる。
するといきなり、勢い良く俺に抱きついて、顔をうずめた。
「ま、正臣くん?」
「…う、るさい」
途切れ途切れに反論を口にする彼の声はどこか震えていて、耳まで真っ赤だった。
これって。
「(笑顔に弱いなんて、ベタだなあ)」
そしてまたそんな君を愛しいと思う自分も、ベタすぎる。
さらさら、さらさら。
柔らかい蜂蜜色の髪に頬を当てて、俺は君の耳元でまた言葉を紡いだ。
天使のような君へ
end.
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