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わからないんだ君が





昔は、唯の捨て駒の一つだと思っていた。
心を引っ掻き回して、遊べるだけ遊んで、飽きたら捨てる。いつもと同じように。
でも何か違った。

一度は捨てた。それは何の疑念も無くいつも通りの事で、誰に対してもしてきたことだったし、いつも通りならば何とも思わない筈で。
それなのに、ちくりと、痛んだ。



彼は、また新たに使える駒となって盤上に現れた。
今度はもっと面白い局面に仕立て上げて、グチャグチャに運命を混ぜ合わせる。
彼は、昔みたいに、此方の思い通りに踊ってくれた。
滑稽で、馬鹿みたいで、成長していなくて、何故だか無性に泣きたくなった。


終わりは、余り面白くなかった。もっと、もっともっと面白おかしく、全て円滑に終わると思った。
全てが終わってから、彼は大切だった筈の友人達を捨てて最愛の人と共に池袋から消えた。

「ねー、不思議だよね」
「何がっすか」
「大切な友達を捨てた君がさ、大っ嫌いな俺の所には顔出して」
「……」

今目の前にいる少年は、眉間に皺を寄せてぐっと耐えるように拳を握り奮えている。
小さいな、と思った。

「ねえ」
「……」
「……何か答えなよ」

ギリッと奥歯が音を立てた。椅子が倒れるのも気にせず勢いよく立ち上がり、彼の胸ぐらを掴み引き寄せる。
見開かれる彼の丸い目。薄く開かれた唇に噛み付いた。

「んっ」

小さく漏れる彼の声に昔を思い出す。今よりもっと小さくて、弱くて、愚かな彼を……。

唇を離して彼は言う。



「……馬鹿なアンタを愛してますよ」





わからないんだ君が
(何処まで解って言ってるんだか。)


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