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捕まえてみてごらん






「本当に捕まえやすいよね、君って」




そう言って、歪んだ三日月が見えた






正確には目の前で笑みを浮かべた臨也さんなんだけどさ






「…うる、さ、い…」



…俺たちは、今、路地裏にいる

時間は夜中なだけあって暗い
路地裏で俺は地面で倒れてて

目の前には臨也さん

腹部には臨也の右足が乗り、今現在もそれは力を入れて俺の腹を押し続けている


理由は、よくわからない


俺がこの人と偶然会った時にはもうすでに機嫌は悪かった
もしかしたら仕事が上手く行かなかったのかもしれない
自分で練った策が全く無意味な失敗に終わったのかもしれないし、それとも平和島静雄に出会ってしまったのかも

どれにしてもどうして俺がこんな目に会ってるのか理由が全くもって解らない




「正臣君、どうして君が俺にこんなことされてるか解る?」


「…解るはず、ないじゃないですか。」


「ふーん、答えが普通すぎる。つまらないなぁ…」


「ッ、ぐぁ…ッ…」




足がめり込んだ
力強く、グリグリと腹部を圧迫させる

きっと痣になるだろうな、これ




「俺が普通な解答求めてると思う?」


「こんな事、されてる理由も解らないのに、なんて言えば、良いんですか…」


「そうだなぁ…暇潰し、とか?」


「機嫌悪い臨也さんにそんな暇、あるとは思えな、っ、ガッ…ゴホッ」




蹴られた。
抉られるように鳩尾を

予期せずそんな所を蹴られて、呼吸が出来なくなる
痛みに腹を抱えているとさっきの機嫌の悪さはどこに行ったのか
ニコニコと機嫌のいい笑みを浮かべた臨也さんが俺の頭を撫でていた




「今の発言は予想外だったかな」



ふふふ、と表情を綻ばせながら言う姿に唖然とした

それから、少し胸が痛む



「そうだ、正臣君。君にチャンスをあげるよ」



痛む腹部にゆっくり撫でる細く冷えた長い指先

目に映る、笑う口端に猫みたく細くなった目




「俺を捕まえてごらん」




「制限期間は一ヶ月」




「それまでに俺を捕まえることが出来たら」








「今日、君にこんな事した理由と君が欲しいもの一つ、あげるよ」




あぁ、勿論俺が用意出来るものだけね?
そんな声を地面についてない方耳で聞き、俺は臨也さんの目を見た

その目は挑発的で、同時に馬鹿にされた気分だった




「…どうする?」


「…やってやりますよ」


「そうこなくちゃ。それじゃあ精々頑張ってね、正臣君」




手を数回だけ振り、この場を去る臨也さんの背を眺めながら俺は痛む体に鞭を打ち、立ち上がる

やってやりますよ。どんな卑怯な手を使ってでもアンタを捕まえます
だから今はそこで高みの見物でもしてて下さい
そっから引きずり落として、俺は手に入れますから






捕まえてみてごらん
(何を?)
(あぁ、たった今決めました。)
(俺は臨也さんを手に入れます)


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