待って待ってほんとに待って
夢をみた。起きたら、枕が涙で濡れていた。
人っていうのは本当に薄情で友達や恋人も永遠ではない。それを俺は痛いほど知っていてる。永遠にずっと一緒だなんて有り得ないと思っている。この関係もお互い依存しあうものではなく淡白なもので、相手は男、ましてやすごく自分勝手で気まぐれな性格であるから俺は期待なんてしていない。
俺は高校をやめて友人とも離れた。連絡もまったくしていないから、次会ったとしても知らない帝人と杏里なんだろうと思う。その場から進めない俺を残して、皆進んでいく。きっと恋人である彼―――折原臨也も。
「―――ねえ正臣」
臨也さんが俺に話し掛ける。メールも電話もめったにしないこの人との会話は本当に久しぶりだった。
「何ですか?」
「俺、引っ越したんだ」
知らなかった。いつの間に。頭の中に色んな言葉が浮かぶ。ほら、知らないうちに変わっていく。どんどん進んでいく。俺の存在なんて知らないよって言うふうに。この人の一部分さえ、この人は教えてくれない。
「そう、なんですか、」
そう答えるのが精一杯だった。ぐるぐると頭を回る言葉と感情。
「うん、すごく広いところ。だから正臣なんてもう知らないよ」
永遠なんて無いと知っていた。でもこの人との時間が永遠であると夢をみた。永遠であってほしいと願っていた。そんな自分に期待なんてしていないと言い聞かす。わかっている、わかっている。いつかは別れて、離れてしまうと、俺はちゃんと――――――
「何で泣いてるの?」
ああ分かっていたはずなのに。分かっている、帝人も杏里も知らない人になること。俺を置いてすべてが変わると。
「泣いてないですよ、」
「ならいいや」
「‥そう、ですよ。俺のことは気にしないでいいですから」
心が痛い。すごく悲しい、寂しい、さみしい。お願い、俺を見て。気にして。(なんて言えないけれど)無理だと、離れていくとわかっていて、この矛盾。
「さよならの時間だ、ばいばい正臣」
臨也さんの背中に羽が生えて、飛んでいった。それは永遠の別れ。
俺は一歩も踏み出せない。踏み出す方法すらわからない。俺はまだ、あの日からとどまったまま。あの日からの置いてきぼり。
(待って待ってほんとに待って)
その言葉を俺は知らない
2010.04.30.
参加ありがとうございました^q^
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