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複雑以上に絡まった
※女体化



「君は俺から逃げられないよ」


にやりと笑って奴はそう言った。
臨也さんの腕に抱きしめられて、その低い声で囁かれる。
いつものことだ。臨也さんは俺に会うと必ず一度は耳元で、呪いのようにこの言葉を囁く。
俺も最初は否定していた。けれどあの日から抵抗するのはやめた。

臨也さんの元に戻った、あの日から。

臨也さんの背中に腕をまわす。体を擦り寄せると、臨也さんは撫でるように俺の髪を梳く。


「愚かだよね、君は。俺のところに戻ってこなければ、まだチャンスはあったのに」

そんなのないも同然だ。この人が離そうとしなければそれは有り得ないことだと分かっている。それでも認めたくなくて、ずっと逃げていたけど。


「分かってますよ」


逃げられないことなんて。戻ってきてしまった自分自身がそれを証明している。その答えに満足したのか、臨也さんは笑みを深くした。

自分のお腹をそっと撫でる。
どうしてだろう。こんなにも愛しく感じるなんて。この人のせいなのに。

この人に与えられた、命なのに。


「俺と正臣君の子なら、きっと頭が良くて可愛い子が産まれるよ」


臨也さんがお腹にある俺の手の上から手を重ねた。その手がいやに優しくて気持ち悪かった。
この人がこの子を愛しいと感じるわけはない。そう分かっている。だからこれは、いい駒ができた、そういうことだ。


「でも、俺に似て…愚かかもしれませんよ」
「大丈夫だよ、言ったでしょ?俺に似て頭はいい筈だから」


それに産ませるなら、正臣君かなって思ってたんだ。
そんな言葉を嬉しいと思うあたり、俺も既に狂っているんだろう。すり、と頬を寄せると、臨也さんは更に強く抱きしめてくれた。
やっぱり俺、どうしても好きなんだな。この人が。

信者ってわけじゃない。臨也さんのすることは受け入れられないし、波江さんにさえ嫉妬する。いつだって殺したいと思ってるし、死ねばいいとも思う。その方が世のため人のため、俺のため。
だけどきっと俺は殺せないし、死んだら泣くんだろう。だって何されても、愛しているから。愛してしまったから。
そしてそれがわかってて、この人はこんなことを言うんだ。


「ここにあるのは愛の証なんかじゃないよ」


臨也さんの指がお腹にぐ、と突き立てられる。痛い?痛いよね。だって俺が痛いから。ごめんね。許してね。こんな奴が、こんな人達が親だけど。

■本文2(本文に入らなかった場合)


「契約の証。勿論わかってるよね?」


君は頭がいいから。
涙が出ないのは、もう感情が麻痺してしまっているせい?






複雑以上に絡まった

糸はもうほどけない










あきゅろす。
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