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風の中
すべてが終わった
静まり返った部屋に、俺の呼吸音だけが響く。
心臓はまだバクバク鳴っていて、頭痛と吐き気がする。

シャワー、浴びてぇな…。

あちこち痛む体をゆっくり起こす。

「…ぅっ、」

腰が、もう…尋常じゃなく痛い。

長く息を吐き、座ったままのろのろと移動する。


風呂場までなんとか辿りつき、シャワーの蛇口を捻る。

「――冷てっ、ああああちくしょーっ…!!」

なんだってんだ。

灯油も残ってないのか、この空き棟は。

冷たい水でベタつく体を洗う。
もちろんボディソープも石鹸もない。
部屋に帰ったらあったかい風呂に入ろう…。


「うっ、く…ふぅ…」

みっともなく嗚咽が洩れる。

実を言うと、かなりキツい。

後ろを使われたのは初めてだ。
それもそのはず、誰とも付き合ったことがないのだから。

だから、キスだってしたことない。

ファーストキスはまだかだの童貞だの処女だの、まぁ今まで散々からかわれてきた。
けど、下半身緩いやつのが、俺としては嫌だ。

無駄な経験値なんかいらない。

長谷川さんへの真っ直ぐな想いが、俺の中では一番大切だった。


なのに、こんな形で、ボロボロに崩れ去ってしまった。


もう、長谷川さんを好きじゃいられない。
いてはいけない。

汚い、こんな汚い俺が、長谷川さんを邪な目で見るなんて、言語道断。
そんなことしたら、長谷川さんが汚れてしまうような気がする。


もう、終わりだ。

今までの想いも何もかも、全て捨て去らなければ。



何よりもまず俺のために。












紡がれる前に消えていった想いは何処へ行くというのだろうか



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