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風の中
2
強姦しているかどうかは、玄関の扉を開ければ一瞬でわかるはず。

少しでも物音聞こえたら強姦確定だからね。
だってここ、誰もいるはずないし。
まさかお化けもいるはずないし。

1部屋ずつ扉を開けては中の音に耳を澄ませる。

1階は異常なーし。

意外に埃のたまっていない階段を上る。
やっぱ頻繁に使われてんだなー。


…………あれ、音がする。

うーんと、……ここ、かな。

音がしているであろう部屋の玄関をそっと開ける。

案の定悲鳴のような抵抗の声と、ゲスい低めの声が複数聞こえてきた。

靴を脱いで足音をたてないように歩く。

…リビングでヤってんのか。
いや、この感じだと、まだヤられる前だな。

よーし、いっせーのーで!!

一気にドアを開け放ち、中へ突撃ー!

相手は3人。……余裕だな。

「風紀だ!ひれ伏せろ!」
……なんか間違えた。

まぁいいや。

素早く間合いを詰めて――

とりあえず突っ立ってたハゲの鳩尾に拳を叩き込む。

「ぐっ!?」

そいつが倒れるのと同時に横にいた平凡顔のマッチョに頭突き。

「い"っ!!」

俺の石頭嘗めんなよ。

頭を押さえて蹲るそいつのうなじに踵落としをしておいた。

最後の一人がかましてきたアッパーを避けつつ、またもや鳩尾に……今度は膝を叩き込む。

「がはっ!」

ドサリと人の倒れる音がして、部屋の中は静まり返った。

害虫駆除終了。

さてさて。

「大丈夫?」

はだけたYシャツを胸の前でかき集めている被害者さんに声をかける。

返事はなく、ただ怯えた顔をされただけだった。

うーん。

「ヤられてはない、よね?」

今度は小さく頷いてくれた。

「そっか。じゃあちょっと待ってて。今他の風紀の人呼んで、このゴリラたちなんとかしてもらうから」

ポッケから携帯を取りだし、風紀室に電話をかける。

『…はい、風紀室です』
出たのは副委員長だった。
長谷川さんは滅多に風紀室の電話にでない。
「もしもーし、北原です。今強姦現場取り押さえましたー。あ、一応未遂です」
『……さっそくか。何人だ?』
「3人です。テキトーにのしときましたけど、そのうち起きるかもなんで、早めに対処お願いしたいです」
『わかった。場所は?』
「空き棟2階の、階段上った結構すぐのとこっす。玄関開きっぱなんですぐわかると思われます」
『了解、……あ、ちょっと待ってくれ。……』
小さく電話の向こうで会話してるのが聞こえる。
誰と話してるんだろう。
『…悪い。北原、お前は怪我ないか?』
「全然平気っす!」
『そうか、ならよかった。それじゃ今から4人そっちに向かわせるから』
「うす!お願いします!」

ピッと通話を切って、ポッケにしまう。

あ、ゴリラたちの身分証回収せねば。

ゴロっと転がっているゴリラたちのポッケやらを調べて、身分証を抜き出す。

あとー、被害者さんの気をまぎらわせねば。
「なぁ、君何組?」

「………」

ダメかー。

「俺ね、3組なんだー。風紀委員の北原琉衣」

よし、3人分回収完了。

「風紀委員長は知ってるっしょ?長谷川さん。あの人かっけーんだよー」

ゴリラを1匹ずつ引きずって、できるだけ被害者さんから離す。

「兄貴!って感じでね。すっげー信頼できんの」

あー、疲れた。ゴリラは重いなぁ。

「副委員長もかっこいいよ。でも、長谷川さんとはちょっとタイプが違ってさ」

ん、こいついいイスになりそうだ。
ゴリラの背中にドカッと座る。

「副委員長はねー、クール!その一言に尽きるかな!如何なる状況でも常に冷静。長谷川さんは、たまに怒るんだわー。怒鳴ったりとかね。でもそれもかっこいい」

更に長谷川さんについて語ろうとしたところで、リビングのドアが開いた。

「北原、お待たせ」

「おぉ」

顔を覗かせたのは、同い年の風紀委員。
あまり大勢で部屋に上がり込むと被害者さんがビビってしまうため、こうやって一人が中を見にくる。
その間他の人らは隣の部屋とかで待機。

「んじゃ、俺そこの子部屋まで送ってくる」
「了解」

さっき回収した身分証を風紀委員に渡す。

被害者さんに少し近寄って、目線を合わせるようにしゃがんだ。

「どう?立てる?」

被害者さんはまた小さく頷くと、ゆっくりと立ち上がった。
いつの間にかシャツのボタンは閉められていた。

「俺が部屋まで送ってくから。詳しい話はまた明日聞かせてもらうね」

被害者さんの前を歩いて部屋から出る。


長谷川さん、褒めてくれるかなぁ。

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