風の中
任せてください! 1
とある日、パトに出掛ける前に、長谷川さんがパトメンバーを集めた。
「今回から、パトロールの範囲を増やしたい」
俺たちは、普段2、3人に別れて、パトロールの範囲を分担してる。
たとえば、南校舎はA君とB君、北校舎はC君とD君、みたいに。
一通りパトし終わったら風紀室に戻り、1時間後にまたパトに行く。
パトロールする場所は5箇所に分けられてて、チームも5個。
だから、どの曜日にどのチームがどこをやるかが決めてある。
「で、増やすのは今は使われてない寮の空き棟なんだが…どこを減らすか、だな…」
範囲が増えるってことは、今あるチームにもう1チーム追加しなければいけない。
けど、風紀で喧嘩強いメンバーはそんなに多いわけじゃない。
正直今でも人が足りないくらい。
減らすとしたら、3人チームのとこだよな。
そして3人チームのとこは俺のチームだけ。
「長谷川さん、そこって一人で回るんですか?」
俺が聞くと、長谷川さんは苦い顔をした。
「まぁ…そうなっちまうな。危険だから一人は避けたいんだけど…人数足りねぇんだよなぁ」
「俺、やりましょうか!腕には自信あるし、そう簡単には負けませんよ!」
「………んー、北原か…」
あれ、あんま信用されてないんだろうか…。
「っあー、わかった。わかったからそんな顔すんな。任せたぞ、北原」
「…!!うす!!頑張ります!!」
「毎日空き棟でもいいか?」
「ローテーションしないんすか」
「6箇所でローテーションすると毎週ズレてわかりにくいだろ」
「……うす」
よくわかんねぇけど、まぁいいや。
ボロッちい建物に足を踏み入れる。
俺も実際ここに入るのは初めて。
どうも古くなったから使われなくなったらしい。
古いっつっても、まだ築15年くらいじゃねーかなーと誰かが言ってるのを聞いた。
15年かー。
俺が生まれたちょっと後に建てられたんだなぁ。
ふむふむ、俺の方がちょびっと先輩なわけだ。
この空き棟は結構狭い。
各階8部屋の4階立てだ。
えーと、2人部屋だから…2×8×4………あとの計算はお任せします。
たぶん100人は入れないはず。
うーん、少ない。
古いからっつーよりは、狭いから使われなくなったのかもね。
そして、なんでこの空き棟を見回ることになったかと申しますと。
最近は強姦被害がこの空き棟で起こっているらしいのだ。
この空き棟は、現在の寮のすぐ隣にある。
寮に入ろうとしたところを捕まって、この空き棟に連れ込まれるパターンが多いそうだ。
……そこまでしてヤりたいんだね。
俺びっくりしたよ。
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