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風の中
聞いてくれ!
「でな、俺が書類届けてきましたー!って言ったら、ありがとうって!言ってくださった!!」
「普通だろ…」
「ぁんだってぇ!?」
「…はいはい、かっこいいデスねー」

俺は今、ルームメイトの麻生辰樹に長谷川さん物語を聞かせてやっている。

「もー!長谷川さぁぁあん!!」

「ぁー、黙ってくんねぇかなぁ…」

おーい辰樹!そんな本より俺の話の方が数百倍おもしろいって!

ソファーで小説を読んでる辰樹にドカッとアタックする。

「っんだお前…」

「はぁぁ…長谷川さんが好きすぎて生きるのが辛い…」

「だったらもう死ねよ…」

まったく、口が悪いなこいつ。
死んだら長谷川さんを見れなくなってしまうじゃないか。

「長谷川さんってさ、喧嘩もできるし頭もいいんだ!」
「それ何十回となく聞いた」
「顔もいいんだ!」
「何百回と聞いた」
「俺、長谷川さんが好きなんだ!」
「何千回と聞いた」
んー、そんなに言ったっけ。

「俺もう長谷川さんのためだったらなんだってできる」
「長谷川さん長谷川さんうるせー…」

「いいし。長谷川さんの魅力に気づかれても困るし。お前がライバルとか俺勝ち目ないし」
「いや…絶対ぇお前に軍配上がるだろ…」
「…まーたそういうことを!」
「あ、今お前ちょっと調子乗ったろ」
「ふふふーん」
「うっぜ」

ま、俺のが長谷川さんと触れ合う機会多いもんねー。
辰樹なんて顔すら知られてないかもしれない。
よし、そのまま空気になって生きなさい!

「たっつきっゎくっうきー」
「意味わかんねぇから」


俺はずーっとずーっと長谷川さんが大好きだ。

でも本人に言うつもりはない。

だって、振られたらやだもん。

自分が恋愛対象として見られてないことぐらい、わかってる。
たぶん、長谷川さんにとって俺は、弟みたいなもん。
てか、なんかうざがられてる気がしないでもないけど、この際それは置いておこう。

そんなんだから、長谷川さんの前では、尊敬の目で見てるフリをする。
邪な感情には蓋をして、清き先輩後輩関係を演じ続けるんだ。

そうすれば、ずっと傍にいられる。

長谷川さんが卒業したって、俺は"後輩"としてメールもするし、電話だってする。

一生もんの付き合いができるんだ。

だったらもう、望むことなんてこれ以上ないじゃないか。

例え長谷川さんが誰かのものになっても、俺は長谷川さんをこっそり好きでいる。

下手に打ち明けて一緒にいられなくなるよりは、どんなに辛くても長谷川さんを見ていたい。

一緒にいたい。


俺が一番欲しいものは、長谷川さんとの繋がりなんだ。











どんな関係でもいいから



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