哀色
本音
新しい高校生活が始まってから、志乃が俺を避けるようになった。
たまに廊下ですれ違って声かけても、無視だったり舌打ちしてきたり。
さすがに俺も最近じゃ声かけなくなった。
そこまで嫌われてんのに、声なんてかけれるかっつの。
でも嫌われた理由が思いあたらない。
本当に、急に、態度が変わった。
聞いた方がいいんかなー…。
聞かなきゃずっとモヤモヤしっぱなしだもんな。
よし、次会ったら聞いてみよう。
志乃と仲良くなったのは、部活がきっかけだった。
なんか話していくうちにどんどん意気投合してって、気がつけばクラスも3年間一緒で、二人で腐れ縁だなんだ言いつつも、俺は心ん中じゃ結構喜んでた。
でも高校は、志乃とは違うクラスになった。
それでも志乃の存在は俺の中で依然としてでかかったから、こんなことになるとはなんとも残念というか、しんどいというか。
仲直りできるといいなー。
「もとから嫌いだよ」
久々に話した志乃は、ぶっきらぼうに答えた。
信じられなくてちょっと志乃の顔をガン見してしまった。
「もとって…」
「だから、最初っから。お前さ、全部持ってんだもん。
顔いい、勉強できる、運動できる、金ある…ってさ、反則じゃん、そんなの。
一緒にいて全然楽しくねぇよ。どんだけ惨めだったことか。
おまけに成松なんて最高の彼氏できちゃってさ。あー、ないわー。
まぁ、クラス離れたしもうお前と一緒にいる必要もなくなったからさ。もう友達のふりすんの止めたわけ。
だからお前も友達面すんのやめてくんねぇ?」
志乃は一気にそう言いきった。
そうか、友達のふりしてたのか。
今まで、楽しかったのは、俺だけだったんだ。
はは、よくありがちな、ねぇ。
そっか。
「…そっか」
志乃は不機嫌そうに眉を寄せた。
「やっとお前と縁切れるわ。じゃあね」
「ん、……今までありがと」
無理してまで、俺と一緒にいてくれて。
一緒に笑ってくれて。
ってまぁ、そんな感じの思いを込めて言ってみたんだけど。
やっぱ嘘くさく聞こえるか。
志乃は、さっきより更に眉間のシワを深くした。
「良い奴ぶってんじゃねーよ」
志乃はそう吐き捨てると、背中を向けて歩きだした。
思えばこの時から、俺の中の色は少しずつ消えていたのかもしれない
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