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哀色
始まり
ガヤガヤとうるさい廊下を、志乃と一緒に歩く。
志乃は、中学からの友達。

「やっぱ、優は何着ても似合うわー」
「んなこともないっしょ」

志乃はやたら俺のこと誉めたがる。
なんでだろね。

今日は新入生歓迎会だからみんな正装してる。
さすが金持ちばっかが集まってる学校だ。
俺は無難に燕尾服。
志乃はかっこよく袴。

あきらか志乃のが目立つしかっけー。
でも、俺は誉めるの苦手だから何も言わない。
ちょっと志乃に悪ぃかな。

ただ、普段からおちゃらけてる俺が言うと、せっかくの褒め言葉も嘘くさくなっちまうんだよね。
だったらいっそのこと言わない方がマシかなっていう、俺なりの自己満な配慮。

「つか優、マジで部屋どーすんの」
「そこだよなぁ…」

新入生歓迎会の中で、高校三年間のルームメート決めがある。
三年となるとやっぱ慎重にいかなきゃだけど、特に思い付く相手もいない。

俺としては志乃がいいんだけど、志乃にはもう彼氏いるし。

あ、この学園男子校だから、普通にホモが蔓延ってる。
もうそれが日常なもんで、そんなんにドン引いてるやつなんか数えるほどしかいない。
俺も今は相手いないけど、昔はちょいちょい男子で付き合ってる子もいた。

そんなわけで、恋人いる人たちはルームメートになる感じ。
別れたらどーすんだって話だけど。

「まぁ優ならすぐ相手見つかるでしょ。イケメンだもんね。向こうから寄ってくるだろ」
「まーた誉める」
「優は誉め尽くしてもまだ足りん」
「過大評価しすぎやー」

相手ねぇ。
ぶっちゃけ誰でもいいんだよね。
こっちに迷惑かけてきさえこなきゃ。

あー、めんどくせ。
こんなんテキトーに学校側で割り振ってくれていいのに。

会場である体育館に着くと、もうすでに結構な人が集まっていた。
いつもは広々としている体育館が、ズラリと並べられた料理と人で、随分狭く感じる。
立食パーティーの形式らしく、会場にいる人らはすでに料理を楽しんでいた。

「優、食べよー」
「おー」

新入生歓迎会は、最初の方は食べ物食いながらお偉いさんたちの話を聞くだけ。
どこが歓迎してんだかね。
真面目な人はちゃんと聞いてるけど、俺や志乃みたいなのは食い物がっつくのに必死。
何よりうまいからさ、この料理。

マナーなんて知ったことかと、とりあえず最初は肉でしょ。
飲み物渡しにきたウェイターさんがおろおろしてる。
いやー、すんませんね。

ペコッと首だけでお礼をして飲み物をもらう。
志乃は見向きもしてない。さすが。
やはりウェイターさんがおろおろしてるから、志乃の分も受け取ってやる。
今度はちゃんとお礼も言った。
さっきは肉が口ん中にあったから喋れんかったんだ。

「志乃、これ飲み物」
「ん、シャンキュー」
「シャンキューて何」
こいつ、口ん中に物あろうが何だろうが気にしない。なんてはしたない。けど、そこがおもろい。

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あきゅろす。
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