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短編(戦国BASARA)
沈む(女主/毛利)

※死ネタ 

 

もう、疲れたの。

木を背にへたり込んだ。
降り続く雨が、体力を奪ってゆく。

完璧なる負け戦だった。
知略に自信はあったのだが、それも完膚無きまでに叩きのめされた。
圧倒的な地の利すらも覆されたのだ。
もう笑うしかない。

「はっ……かはっ……」

喉から血の味が広がる。
これはまずいだろうな、と他人事な感想が浮かぶ。

その時、目の前に立つ者があった。
のろのろと視線を上げると、そこには宿敵の姿。
この人の気配も感じられなかったとは、いよいよ自分も駄目か。
そんな風に薄く笑みが出た。

「何を笑うておる」

心なしか不機嫌な声。
すみませんね、手応えない敵で。
そう言おうとしたが、喉はもう使い物にならなかった。

「それが我を裏切ってまで戦に出た貴様の末路か、女主人公」

女主人公と呼ばれた者は緩く首を振った。
もうその名は捨てたのだ。
小国のか弱き姫はもういない。
いるのは戦に敗れた国主だ。

首もとを指差す。
彼の顔が歪んだ。

「言った筈ぞ。戦で死したのは"当主"よ、姫ではない。こちらに来れば命は助ける」

らしくもない言葉に、頬が緩む。
どうしちゃったの、まったく。
そんな先代達が家同士で取り決めた縁談に固執するなんて。

「女主人公」

苛立つような声。
こちらの答えなど知っているだろうに。

目が霞んできた。
闇に緑が浮かんでいるようにしか見えない。

「貴様、最後まで我を裏切る気か」

激昂寸前と言った口調。
先に裏切ったのはどっちよ、と言いたくなった。

感覚が薄れてゆく。
丁度、四肢の末端から熱を吸い取られるように。

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