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北の使いっ走り……
イジメじゃないですかコレ。

「はろー、コウスケ君」

聞き慣れているが慣れない声が後ろからかかる。

電話では散々聞いた声。
しかし生では殆ど聞いたことのない声。

振り返ると予想通り、僕をパシリにさせている張本人の姿が。

「……アカリさん、シンオウには来ないんじゃなかったんですか?」

そこにいたのはホウエン三強と有名なアカリさん。
スタイルや性格の良さから、女性ファンも多いことで知られるホウエンの一チャンピオン。黙らせておけば僕だって別の目を向けたかもしれない。

しかし僕から見ればそこにいるのはただの鬼。
アカリさんに振り回されて、今までどんな目に遭ってきたことか。

ホウエンを出ることがなかった、そしてシンオウを嫌っていたハズの彼女を目の前にして、僕はちょっと混乱していた。
冷静になってたら、先日シンオウで四地方チャンピオン会議が行われたことくらい思い出せたはずだ。

しかしアカリさんはそういうところは気にしない人だ。

「ちょっと仕事でさ。やっぱ物は試しだね。シンオウも意外といいとこじゃん」

それはどうも。
自分をパシっている人とはいえ、自分の住んでいる場所を嫌われるのは気分のいい話ではない。


……と、いうかこの人は何しにここに来たんだ?さっきからイヤな予感しかしない。

直に会うのは初めて会った時以来、つまり4年くらいぶりなのだが、そんなのは感動できない。目の前にいるのがこの人である限り。

「……で、何の用ですか?」


日も傾き始めた夕方、一人暮らし中の僕は買い出し帰り。

こんな時間から何のつもりだろうと聞いた僕の視界に、新たな人影が映る。
アパートの三階にも関わらず、廊下の外側からその影は現れた。
普通びっくりするところかもしれないが、慣れすぎてびっくりできない。

「よ、コウスケ」

「……ヨウイチロ」

ここで相棒が登場する理由。
ああなんとなく想像がついてきた。


そんな僕に、アカリさんはカラリと笑ってあっさり言った。

「今日はヨウイチロさんに案内してもらったんだけど、君の料理の方が下手なレストランよりよっぽど美味いって聞いてね」

そんなこったろうと思いましたとも。
ついでに厄介事も押し付けられるに違いない。







日がとっぷりと暮れた頃、僕達は西へと飛んだ。


ついでに厄介事を押し付けられるに違いないとは思っていた。思ってたけど!

「はー。まずここがハクタイの森ねー」

まっさかヨウイチロに案内役をパスされるとは思ってなかった。
しかもよりによって!

「で、森の洋館ってのは?」

よりにもよってハクタイの森の洋館の案内なんて!



あの後、ヨウイチロは用事があるというので案内役が僕に回ってきた。

話を聞くに、昨日まではもう一人一緒に来ていたホウエンチャンピオンが案内をしていたらしいが、今日は忙しいらしい。
で、シロナさん達と知り合いのヨウイチロに白羽の矢が立ったはいいが、ヨウイチロにも用がある。

よってここでパシリの僕の登場と。

……納得いかん!



とか思ってる間に、なんだかんだで森の洋館に辿り着く僕ら。ああ帰りたい。

って、いうか、怖いのに強いのはわかりましたけど、なんでアカリさんはわざわざこんなところに来たいなんて……。
まさか、噂の幽霊に会いたい、なんて言い出さないだろうな、いやアカリさんなら言い出しかねない。帰りたい。


何があってもいいように、入る前からレントラーのレーラーを横に控えさせている。
もちろん、僕自身のため。

アカリさんに何かあっても、アカリさん一人で何とかなるに違いない。僕なんかが下手に加勢したら逆に邪魔だろう。


ギッ ギッ ギッ……

出……ってアカリさんか。
なんで階段上ってるんですか。


うわぁもう周辺にゴースが出たり消えたりしてるし……。ホント、頼むよレーラー。

ホウエンにいないゴースが珍しいのか、アカリさんはサーナイトを使ってゴースを数匹落としている。
それで落ちた核をまじまじと見るあたり、やはり研究者である。

「……さっきから気になってたんですけど、」

さっきさらっと流したが、ゴーストタイプにエスパーで挑むなんて、さすがと言う他ない。

「ん?何?……うぉあっ!」

核をちょいちょいと突っついたらゴースが眠りから覚めたようで、アカリさんは慌てて下がった。
でもなんか、アカリさんなら素手でもなんとかなりそうな気がする。何でだろう。

「えーっと、ここに来た目的は?」

それを言うと、アカリさんは僕に向かってニッと笑い、僕が恐れていたのと大差ないことを口にした。

「そうそう、目が光る絵がある部屋、ってのはどこ?」


帰っていいですか。







(絶対わかってやっている鬼)

一番の目的はゲンガー捕獲(を僕にさせる)事だったと、達成できなかった帰り際に言っていたが、二番目は絶対僕をビビらす事だ。

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