ありがちな悲劇
さっきまでソフィがいた投影装置に誰か映っていた。大小二つ。この声はでかい方のものらしい。
『……遊んでいたのか……』
優しい声だった。ちょっと映像粗いけど、多分教官より十とか二十とか上くらいの、…教授とかかな。ここに映像あるくらいだし。
おじさんが近寄ったのは妙に表情の乏しい子供だった。頭の飾りからしてヒューマノイドだろう。なんかちっさい気がするけど。
男の人は子供の前で膝をつくとその頭を撫でた。
『……嬉しい時は……こうするんだ……』
言って男の人は、大げさなくらいにいっと笑った。
……なんだこれ、ヒューマノイドの精神的な発達実験、とか?でもさっきラムダって。
赤い目の子供が真似をした。微妙にぎこちないあたりがなんか。
この後きっとよくないことが起こるんだ。
アニメ慣れしてる俺は簡単に予想できて、とっとと教官の後ろに隠れてぎゅうっと目をつぶった。
や、俺駄目なんだって、こういうの八割方泣いちゃうんだって、これきっとちゃんと心が形成される前にこの人死んじゃうんだよ…うわ想像するだけで泣けた。
『ははは……』
楽しそうな男の人の声に更に泣けた。
『器が魂を形成することもあるのだよ……』
『見たまえ……日に日に人間らしく成長しているではないか』
『私がなんのためにラムダを人間として育てる事にこだわったと思うのかね?』
『私は……!』
やばい。ダブる。人ではあり得ない体、人としてしかあれない心。
この人の願いは叶わなかったことが知れて泣いた。
「何……?今の……」
「ラムダ……って言ってたような気がするけど……」
「あれはどう見ても人間だった……」
「ヒューマノイドだよ」
しまった泣いてたから発音悪い。教官の後ろから出て目を擦りながらもう一度「ヒューマノイドだよ」と言った。
「どういうこと?」
「どうもこうも、サイも同じの頭にくっつけてたろ。よく見えなかったけど、多分関節とか人工物だよ」
だろ?と聞くと、エメロードさんは頷いた。
「どういうことだ?……結局、ラムダというのは何なんだ?」
アスベルの目が俺とエメロードさんの間を往復した。
「ラムダは、他の生命に巣食う悪魔です」
言い切ったエメロードさんの声が響いた。
当たってほしくなかった予想が当たった瞬間だった。
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