人とそうじゃないものの境界
「プロトス1、こちらへ」
いい加減考えすぎると熱出しちゃう自分の体質はわかってきたから黙ってついてきたけど…なんか情けない上に事態解決しないんじゃ意味ねぇよ。
エメロードさんがソフィの情報統合の調節やるとかで、戻ってきた部屋で俺は溜め息を吐いた。
「今度は何の心配事だ?」
教官にこんなセリフ吐かせる始末だ。
「エメロードさんの意識改革について少々」
「…職人は自分の道具に愛着を持つものだ。大工なら鏨や金槌、剣士なら剣、パスカルのような技術者なら機構。だが…」
教官の眉が寄った。
「俺らがソフィ贔屓ってのを引いても、…アレはないと思いますよ」
使い捨ての紙コップみたいだ。
エメロードさんはそういう目をしてる。
気付くと胸の辺りで拳を作っていた。イカロスはエメロードさんと会ってから、ずっと口をきかない。
「ラムダ……!
消さないと!」
ソフィが声を上げた。周りにはちらちら光る文字の渦、おおSFの世界。
「うあああ!」
「ちょ、ソフィ!?」
頭を抱えて苦しみ出したソフィに、でも手を出していいかわからないから上げかけた手を伸ばせない。
ばちん、とエメロードさんが操作してたパネルに火花が散って、文字の洪水が止まった。くらんとふらついたソフィに駆け寄ってその肩を抱く。
「ソフィ、大丈夫か!?」
「───ちょっとエメロードさん、あんた一体何したの!?」
結局崩れ落ちたソフィをアスベルと二人で支えながら噛み付いた。空気悪くなるのは承知の上、悪者扱いは大目に見てほしい。結局俺だってソフィ贔屓だし。
「どうやらうまくいったようですね」
「いや何がだよ」
「……どういう意味ですか」
自然パーティの目はきつくなる。それで堪えるような可愛げのある人じゃないと思うけどね。
悪い意味で自分に絶対の自信を持ってる人だ。俺らで何言っても聞き流してしまえるだろう。
「プロトス1は……ラムダを消し去るために作られた戦闘兵器です。ラムダの情報に関して混乱が見られたため、再度情報を与え直したのです」
「今度こそ……ラムダを消し去る。今度こそ……!」
うわごとみたいなソフィのセリフに、首筋がちりっとした。…嫌な予感。
うっかり自我が消されるとかないよな、そう思いながら立ち上がるソフィを支えてると、知らない声がした。
『……ラムダ』
優しい男の人の声だった。
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