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ソフィの記憶
「…へー、じゃぁもともと『アンマルチア』って血縁関係とかなかったんだ」
「ええ、フォドラにおける技術者集団の一派に過ぎません」
「ええ〜、じゃあポアソンにお金返さなきゃ駄目じゃん」
「…パスカル。その前に、」
「子供から借りないでよ…!」

緊張感に欠ける会話はある程度いつものこと扱いされてて、もうよっぽど暴走しない限り突っ込みも入らない。…地味にさみしい。
そんなこんなでたどり着いた部屋が目的地らしい。

「プロトス1を台に寝かせて下さい」

そう言ってエメロードさんは横の装置を動かし始めた。あと俺ら、本気で心配する以外のことできないんだよな。

「ソフィ…」

ソフィがちゃんとよくなりますように。
そのソフィがまた苦しみだしたのは直後のことだった。






部屋を駆け回るソフィとパスカル。
別にいい。パスカル止められなかった場合にはよく見る光景。
問題は、二人の体が半分透けてて装置の上に寝たままのソフィと呆然としてるパスカルがまた別にいることだ。

「…なにこれ」
「装置に逆流してしまった粒子体の一部が実体化してしまったようです」

ええー、なにこの、さっき言ってた分減保全?の中途半端バージョン。つかこれ戻さなきゃ駄目くね?

「ソフィの精神の実体化……ということは、これはソフィの気持ちなの?」

だとしたらパスカル相当かわいそうだよな。自業自得だけど。
やがて息が切れたらしい粒子パスカルはソフィを追いかけるのをやめて膝に手をついた。それに気付いたソフィは、逃げるのをやめてパスカルの肩に手を置いた。
背後のソフィがまた光りだす。

「…みんな」

目を閉じた、半透明の仲間たち。…こうして見るとヒューバートって低いな…いや俺も175しかないんですが。
つか教官はいいとして真田さんとか完二とか何あれ。高過ぎなんだけどほんと日本人か?実はロシアあたりの血入ってんじゃねーの……真田さん孤児院育ちでしたーわかるわけねー。口滑らさないようにしないと。
地味に凹んでるとまたソフィが光った。これ真面目に大丈夫かな、そろそろ粒子足りないとか言うんじゃ、

「…リチャード」
「王子…」

静かに目を伏せるリチャード。やっぱ美形だー。つかこいつも背ぇ高いし…くそーどーせ日本人は平均身長低いわっ。
密かに文句言ってると、びゅんっと風を切る音がした。
…ソフィ(粒子体)がリチャードに拳を振るっている。

「……なぜリチャードにだけ攻撃するの?」

ラムダ、とうわごとを言うソフィから目を逸らして、俺は黙って手のひらに爪を立てた。


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