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命を懸ける決断
ふぅっ、
ソフィの肩から光が零れ落ちた。
まあるい光はほろほろとソフィの体から溢れ続ける。…空になっちゃうんじゃないかってくらい。

「ソフィの体が……!」
「粒子化が始まってしまいましたか……」

慌てる俺たちに、一人冷静なエメロードさんが言った。

「粒子化……?」
「プロトス1は……肉体が粒子体で構成されているのが特徴です。
今光っているのが、プロトス1の肉体を構成する粒子体です。ひとつひとつは砂よりも小さな物ですが、それが無数に集まり結合して人の形を取るのです」

イカロスは多分こうやって具現化してるんだろうな。少なくともこの世界では。
…って、ちょっとこれまずくない?粒子の結合に綻びがあるってことだろ。
ふぅっ、とアスベルたちからも光が零れ始めた。

「え、ちょ、何!?」

うっかり連動して消えそうとか言うなよ!?

「えっ?これってどういうことなの!?」

パスカルが声を上げたけど、アスベルたちも答えられる状況じゃない。ていうか本人たちもわけわかってないな。

「プロトス1の粒子と同期しています……これはプロトス1が、分減保全を行った結果のようです」
「分減保全?」

なにそれ。ていうか耳で聞いただけじゃ漢字変換できないよそれ。

「プロトス1はひどく損傷した場合、粒子化して自己の機能を休止させ肉体の再構成を行います」

それが単粒子保全。冬眠みたい。
それにしてもアスベルたち、きらきらしててキレイ。ちょっと現実逃避。エメロードさん話長い…いや必要な説明なんだろうけど。

「そして分減保全とは、粒子化した状態で粒子を別の器に分割することです」

…それってソフィの体の再構成できないんじゃ。粒子足りるのか?

「プロトス1はあなた方の近くで粒子化したことはありませんでしたか?」

心当たり。あるよー。むしろ一個しかない。

「七年前のあのときか……?」
「むしろ他にないだろ」

決定的な瞬間は見てないけどね。俺直前に移動食らったからなー。うーん見たかったような見たくなかったような……。

「しかし……分減保全は実行することはないはずです。分減保全は単粒子保全に比べ、完全な再構成が非常に難しくなるからです」

だったらなんでそんな機能つけたのエメロードさん。

「失敗すれば復元が不可能になってしまうこともあるほどです。なのに、どうして……」

考え込むエメロードさんに、何か思いついたらしいパスカルが食い付いた。

「その分減保全は、もしかして器自身にも影響があるんじゃない?」
「確かに、器の中で再構成の準備をする際に器自体にも再構成を働きかけます」

駄目だ俺そろそろついていけない。パスカル何思いついたんだ?

「つまりソフィは、自分の命を三つに分けて与えることでアスベルたちを助けたんだよ」

あ。
そうだ、粒子化ってそういうことだ。七年前、あのでかいのに襲われて、俺はヒューバートとシェリアがふっ飛ばされるとこしか見てないけどあれだけで相当ダメージ来たはずだ。
それにシェリア。いきなり丈夫になったって、つまり免疫系の強化と、今まで病気と戦う方に使ってたエネルギーを体を作る方に回せたってことで。

「そうだったのか……七年前、ソフィは消えたのではなく、俺たちの中に入ったのか」
「私たち、ずっとソフィと一緒にいたのね」
「もしかして、ぼくたちがソフィと同じ力を持っているのも、それが影響しているんじゃ……?」

可能性高いな。…久しぶりにこれ言うけど、なんであのタイミングで移動したし俺。いいなー三人ともお揃いー。俺現場にいたのに…一緒にいたのに…。

「ソフィ……」

三人がきらきら光の降る中で、ソフィを優しい目で見ている。こんな状況でなきゃ一時間でも二時間でも三時間でも放置して鑑賞するとこなんだけど。

「じゃあ、今の粒子の状態でもう一度分減保全するとどうなるの?」
「分減保全後は自己保全機能の再構成ができないため、自己保全自体ができなくなります」

つまり一回こっきり。いやだからなんでそんな機能ついてんの。

「俺たちのためにそんな危険なことを……」

エメロードさんはしばらく何か考えた後、「急ぎましょう」と俺たちを促した。


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あきゅろす。
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