天使どころか道具扱い
「あなたがフォドラの方ならぜひお伺いしたいことがあります。この子をご存知ありませんか?」
す、と引いた先には、床に寝かされたソフィがいる。また薄くなってる気がする…手が見つかる前に消えるなよ、頼むから。
「プロトス1ではありませんか」
エメロードさんはソフィを当然のようにそう呼んだ。
「どうやら壊れているようですね。あなた方はエフィネアからこれを運んできたのですか?」
「壊れた、って……」
シェリアが複雑な顔で言った。フォドラの人の認識なんてこんなもんだろ。むかつくけどな。
「もしやあなた方は、このプロトス1がなんなのかご存知ないのではありませんか?」
シェリアの顔を見て、エメロードさんが言った。まぁ現状認識って、よく考えると「ソフィはエフィネアじゃなくてフォドラの人間」だもんな。少なくともアスベルたちは。
はい、と控え目に手を上げた。
「何ですか?」
「……お人形、とか」
「ゆきみち!」
びく、と肩が跳ねた。シェリアに怒られるの何回目だろ。怒られるの得意じゃないしね。
「その通りです。プロトス1は人間ではありません。私たちフォドラの研究者が戦闘用として開発した、人造ヒューマノイドなのです」
おまけに戦闘用ときた。強いわけだよ。
頭抱えたくなった。感情持ったの絶対裏目に出る。いやもう出てるのか、リチャードの顔で不意討ち食らったしな。
「……どのような存在であろうと、俺たちにとってソフィがソフィであることに変わりはない。
エメロードさん。俺たちはソフィを治すためにフォドラへやってきました。ソフィを治療することは可能でしょうか?」
アスベルがまっすぐな目で聞いた。
ちょっと感動した。アスベルは変わらない。すごく大事なことがずっと変わってない。まっすぐな目、譲らない目、たとえソフィが人間じゃなくても。
(だからこいつを守りたい)
ホルダーの召喚器を撫でる。守りたいから得た力、こいつのために使えるならどれだけ負担かけられても耐える。耐えられる。
エメロードさんはソフィの側に膝をついた。
「…プロトス1には自動修復機能が備わっているのですが、それがうまく働いていないようですね」
「それって直るもんなんですか?」
「可能だとは思いますが、修復にはヒューマノイドの研究施設に行く必要があります。
ですが……私が休眠する以前から、あそこは危険な場所でした」
エメロードさんは更に言葉を重ねた。
年月の経った今、ただでさえ危険な場所がもっと危険になっていることは十分予想できる。
そして施設に着くまでソフィがもつかどうかわからないこと。
装置が働くかどうかも定かでないこと。
ソフィが元通りになるかの保証もできないこと。
「それでもあなた方は、プロトス1の為に危険を冒すというのですか?」
言われるまでもない。
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