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エメラルドの変化だと思う
緑の縦ロール、少し血色の悪い肌、格好が黒っぽいからやたらとそれが強調されている。

「…脈も呼吸もないわ……でも死んでいるようには見えない。どういうこと?」
「仮死状態とかでなくて?」
「どうかしら……この街の人なのは確かだろうけど」

シェリアが言う間にも少年はパネルの操作を続けていて、女の人が寝ている装置が低い音を立てて振動を始めた。
下がってきたシェリアをアスベルとヒューバートが背中に庇う。習慣抜けないな。
女の人が目を開けた。
金色の瞳をしていた。

「…イカロス」

稲葉市のペルソナ使いにとって金色の瞳は特別な意味を持つ。影の目の色だからだ。

───人間じゃない、ソフィと同じだな

「同種、ってこと?」

───そ、つくりもの
───あいつがなんでここまでわざわざ連れて来たのか……

ぼそぼそと言い合う間に、女の人が口を開いた。

「…サイ、あなたがあの人たちをここまで案内してきたのですか?」

サイ、と呼ばれた少年がこくりと頷いた。やっぱ口きけないのかな。

「生きていたのか……!」

教官が思わず、といったように声を上げる。ていうか俺が驚かなすぎなのか。

(つくづく常識から外れっちまったなー…)

溜め息と同時に女の人が言った。

「……あなた方はどこのどなたですか?」
「アスベル・ラントていいます。フォドラとは別の世界からやってきました」
「別の世界というと、エフィネアから?封印が解除されたのですか?」

別の世界、と聞いて女の人は驚いたようだった。でもどっちかってーと、世界(この場合星)が他にあることより、そこから「来られた」ことを驚いているようだった。
ていうか封印てナニ。
みんなで目線を交わし合う。みんな知らないらしい。よかった俺だけじゃなくて。
女の人はサイに目線を向けた。サイは相変わらず一言も喋らずに首を横に振った。

「そうではない?変ですね。だとするとあなた方はどうやってここへ?」
「あたしのご先祖様が途中まで作ってたシャトルを利用して飛んできたんだよ。着陸するときに壊れちゃったけど……」
「ご先祖様……もしやあなたは、アンマルチアの?」
「うん、そうだよ。アンマルチア族を知ってるってことは……もしかしてアンマルチア族って、このフォドラと関係があるって事?」
「その通りです」

女の人が頷くとみんながパスカルを見た。アンマルチア族のルーツがフォドラにあるって予想は当たってたわけか。この人とは似てないけどな。
話逸れた。気をとり直してアスベルが聞く。

「あなたはフォドラの方ですか?」
「はい……自己紹介が遅れましたね。私の名前はエメロードといいます」

レイアースか。と思った俺は自分で思うより重度のオタクなのかもしれない。

「まさかエフィネアの方とこうしてお会いすることになるとは思いませんでした」
「エフィネア……それがフォドラにおける、ぼくたちの世界の呼称ですか」
「いんじゃね?キレイで」

意味あんのかな。今度聞いてみよう。

「なるほど、私はずいぶん長い間眠りについていたようです」

装置を見ながら呟くエメロードさんに、パスカルが軽く聞いた。

「長いって、どれくらい?」
「……千年ほどになるでしょうか」

なっが!
思わず全員が引いた。…もしかしてこの星、千年経ってもまだこの状況、とか?
まさかこんなに時が経っているなんて、とか言ってるけどあんまり驚いてるように見えないのはなぜですか。

───……

「イカロス?」

なぜだかイカロスは、不機嫌に黙りこんでいた。


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