希望がつながりますように
所々に何かのカプセルがあった。中に何か入っているものいないもの、その一つに小さな木が入っていた。
「…綺麗だな」
ここって植物ほぼ死滅してるっぽいからなおさら。
「そうだったのか……」
隣に立ったアスベルが呟いた。
「どしたん?」
「ああ……この星に来てから感じていたことが何だったのか、ようやくわかった」
「何の話?」
シェリアも寄ってきた。アスベルはシェリアにちらっと笑顔を見せて、カプセルの中の木を見上げた。
「人がいないこととは別に何か足りないと感じていたんだけど、それがずっとわからなかった」
「……緑?」
カプセルを指差しながら聞くと、「それもあるけど、」とアスベルは言葉を続けた。
「うまくは言えないけど───俺たちの星では、魔物といえども生き物というか…生命だと感じられた。
けど……この星の魔物からは、命の息吹を感じなかったんだ」
魔物ですら無機質になった世界、か。ほんとの意味での生き物がいない、この街だってきっと、人間が歩くのは久しぶりなんだろう。
「なんとなくだけど……アスベルの言っていること、わかる気がする」
シェリアが胸に手を当てて俯いた。
「この星には、植物や動物といった生命がまるで存在しない。だから、これがあるんじゃないかな」
「…今話飛ばなかった?」
「飛んでないさ。わずかに残った緑を大事に残しておきたくて、これがあるんだと思うんだ」
アスベルが慈しむようにカプセルを撫でる。その手が緑に触れられないことがすごく惜しい気がした。
アスベルには緑が似合う。すらりと伸びた幹に支えられて広がる緑。ファンタジーによくある「世界樹」がこの世界にもあるなら、ぜひアスベルの背景になってほしいと思う。
「きっとこの星には、緑がなくなったことを悲しんで残されたものを大切にする───そんな優しい人たちが、いっぱいいたのよ」
シェリアが優しい瞳でカプセルの中の緑を見る。
───そいつらは一人たりとも生き残れなかったらしいけどな
それシェリアに言ったら殺す、二人に聞こえないように呟いた。
小さな人影は、時々俺たちを振り返りながら奥に向かっていた。
「…案内してるみたいだな」
「この奥に何かあるのか…?」
「それが今のぼくたちに必要なものだといいんですがね」
少年(多分)の案内の下、奥に進んでいくと、光る半球がある部屋に着いた。操作盤っぽいとこに追いかけてきた少年がいる。…やっぱなんかロボっぽいな。
「あの装置がどうかしたのかな?」
パスカルのセリフに反応したように、少年がパネルに手を伸ばす。
『ゆきみち』
「イカロス?」
『中に人がいる』
「は!?」
俺に、というよりみんなに向けたセリフらしいそれを聞いて慌てて目線を戻すと、光のドームがあった場所に女の人が寝ていた。
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